事業計画(2019年度)

1.2019年度の展望

 日本工学アカデミー(以下、EAJ)は、人々の安寧と豊かな社会の実現を目指し、「日本工学アカデミーの将来構想(2017.11.22)」を確実に実現していく。そのために、2019年度は、これまでの体制面や財政面での改善の上に立って、より社会的インパクトの大きな活動を進める。特に、幅広い学問分野、学際分野の専門家や多様な関係者との共創を軸に活動し、協働を通じて、具体的に新しい価値、成果を生み出す実践的な活動を意欲的に進める。その際、活動の継続性を重視し、得られた知識や経験、人的、組織的連携関係をもとに、EAJを核にした共創場を実現していく。また、それぞれの委員会、支部などをおいては、これまでの成果を踏まえ、自主的に「年間活動計画」を作成し、計画的に活動を進める。

2019年度は特に以下の点に留意する。
 

  • 喫緊の課題である我が国の科学技術力の向上や人材育成に向けて緊急提言活動を行うと共に、EAJの事業横断的かつ継続的に本テーマに取り組む。
  • 豊かで持続可能な国づくりや地球規模課題への対応を図るため、未来社会の予測などをもとに優先課題を選定し、幅広い智慧と経験を活かし、よりインパクトの大きな提言につなげる。
  • 社会への貢献が期待され急速に進歩している、情報通信技術や遺伝子技術などの利活用において、科学技術の負の面として懸念されるリスクや製造業での最近の不正事例に鑑み、倫理課題への取り組みを強め、国内外に広く発信する。
  • 政策提言のとりまとめにあたっては、EAJだけの単独意見ではなく、社会の多様な立場を取り入れることに努める。このために、会員と立法府、行政府、学界、産業界、一般市民などとのより効果的な意思疎通の場を実現する。
  • 国際的なネットワークの中での活動を強化し、世界工学アカデミー連合(CAETS)などにおける存在価値を高め、EAJの国際的影響力を向上させる。
  • 女性会員、若手会員、人文社会科学分野の会員の拡大に努め、未来社会の設計に多様な視点からの新たな息吹を吹き込む。
  • 事務局機能強化の一環として、会員向けのメール配信を定着させ、また、WEBサイトのさらなる充実を進める。また、事務局業務を合理化し、ゆとりある職場を実現して、EAJ活動の一層の強化に資する。
  • 多様な収入源を開拓し、事業展開のための財政基盤の強化と資金の安定確保を図る。

2.法人運営に係わる活動

2-1 企画推進活動

1)社員総会 (議長:会長)
 社員総会は、EAJの最高議決機関であり、理事及び監事の選任、事業計画・予算、事業報告・決算などを決議する。定時社員総会は、毎事業年度終了後3カ月以内に開催する。
多数の会員が一堂に会する機会を利用し、会員のみならず様々な分野の専門家が、工学や科学技術と社会との関係を議論する場として、EAJフォーラムを開催する。同様に、新年賀詞交換会などにおいても、多数の会員が交流できる企画を検討し、実施していく。

2)理事会 (議長:会長)
 年に5回(社員総会直後、7月、11月、2月、5月)開催し、会員入会可否、役員選任、諸規則の制定・改定・廃止、重要行事等の開催計画などの審議、議決を行う。なお、2月理事会にて、次年度事業計画および収支予算を議決する。また、5月理事会にて社員総会に提議するすべての議案を議決する。
また、会長アドバイザリー委員会では、外部有識者から工学アカデミーの在り方について会長にアドバイスをいただく。

3)企画運営会議 (委員長:阿部博之、委員長代理:永野博)
 年に8回開催し、EAJの基本方針や分野別事業等の重要課題につき企画・調査・検討し、理事会に提議する。また、会長、理事会からの諮問に応じて調査・検討し答申する。

4)企画推進グループ (リーダー:城石芳博)
 次の30周年に向けたEAJの初年度として、以下の事業基盤強化活動を重点的に支援する。法人運営に係る活動では、 財務・事務機能強化委員会、法人会員強化委員会と連携し、組織基盤増強活動の支援を行なう。公益目的事業に係る活動では、政策提言委員会と連携し、新規プロジェクトや談話サロンの立案、活動支援を行うとともに、広報委員会と連係し、会員や社会とのコミュニケーションを支援する。

5)産業技術館設置準備委員会 (委員長:小宮山宏、専門部会長:永野博)
 産業技術館(仮称)についての科学技術館との意見交換を進める。

2-2 組織基盤増強活動

1)会員選考委員会 (委員長:嘉門雅史)
 前年度に引き続き年度内に4回の委員会を開催し、推薦された会員候補者の選考を行い、適格と認められた候補者を理事会へ推薦する。正会員総数が800名を越えることが目前となっているが、EAJの役員、会員の協力を得て、会員資格のレベルを維持しながらも一層の会員増を図り、女性会員比率の向上と企業所属会員比率の向上に努める。

2)法人会員強化委員会 (委員長:中村道治)
 賛助会員の拡大に向けた活動を継続し、財政の健全化に努める。また、企業・団体に在籍する指導的な研究者や技術者との科学技術イノベーションに係わる幅広いネットワークを構築して会員強化に結びつける。さらに、「日本工学アカデミー・賛助会員企業ラウンドテーブル」を開催して、賛助会員などと我が国の持続的発展に向けた取組みなどの共通課題について意見交換して、その成果をEAJ活動の参考にするとともに、産業界のEAJの活動への参加を呼びかける場として開催する。

3)財務・事務機能強化委員会 (委員長:中村道治)
 EAJの活動を支えるために、会員および賛助会員からの会費収入に加えて外部受託事業の拡大など、新たな収入源の開拓を事業横断的な課題として推進する。また、事務体制を強化し、政策提言活動や国際活動、広報活動などへの支援を強化する。

2-3 事務局

 情報伝達・連絡などの支援業務の円滑で効率的な実施に努め、EAJ事業・活動を支援する。
 

3.公益目的事業に係わる活動

3-1 委員会活動

1)政策提言委員会 (委員長:亀井信一)
 社会が目指すべき方向性について、先見的、創造的な提言活動を強化する。また、この課程で、会員に能動的に参加意識を持ってもらえる機会を創出する。2019年度は、喫緊の課題である我が国の科学技術力の向上や人材育成に向けて緊急提言活動を行うと共に、先見的、創造的な提言に結び付くプロジェクトの立案と推進、成果物のとりまとめのための審査・助言、成果の効果的な活用を図る。

 新規プロジェクト提案を常時歓迎し、年間10件程度を目標とする。
 2019年度は以下のプロジェクト活動を行う。

(1) 海洋研究の戦略的推進 (リーダー:藤井輝夫)
 専門・産業分野の壁を越えた、世界に先駆けた海洋国家の創出が求められている。水産資源、海洋鉱物資源、洋上や張力など海洋再生エネルギー、海上、海中ヴィークル、海上ロジステックシステムなどの技術開発の状況について検討会議を開催し、年度末を目途に進めるべき研究開発の方向性について提言をまとめる。

(2) 量子コンピューティング (リーダー:曽根純一)
 早期に戦略提言素案を作成し、量子コンピューティング分野のキーパーソンとの議論を経て提言を完成させ、わが国の骨太の政策立案に貢献する。

(3) 次世代マテリアルシステム (リーダー:関谷毅)
 訪問調査、公開シンポジウムを計画する。これらを踏まえて、研究の総括、提言の検討を進め、2019年10月までに助成研究の報告書を印刷発行する。これらをもとにEAJのプロジェクト報告書(提言中心)を取りまとめ、国への政策提言を目指し、関係機関と意見交換を計画する。

(4) 政策立案のための科学 (リーダー:小林信一)
 訪問調査、公開研究会(第2回、3回)を実施する。これらを踏まえて、研究の総括、提言の検討を進め、2019年9月までに助成研究の報告書(資料的内容を含む)を印刷発行する。これらをもとにEAJのプロジェクト報告書(提言中心)を取りまとめ、10月以降に談話サロン等で報告、意見交換を計画する。

(5) 未来社会と工学教育 (リーダー:光石衛)
 2030~2050年における社会的、産業的課題を抽出し、新しい科学技術潮流の俯瞰を行い、目指すべき科学技術イノベーションの提案およびその推進役となる工学人材の育成策を提案していく。プロジェクト会議を隔月ペースで開催し、6月に中間論点整理を行い、2020年2月を目途に最終とりまとめを行う。

(6) 立法府とアカデミアの知的情報共有に関する調査・研究 (リーダー:永野博)
 科学技術に立脚した政策の立案、遂行における立法府の役割は重大だが、わが国ではアカデミアが創出する知的情報を的確に国民を代表する立法府に届ける道筋が確立していない。そこで海外の実績も参考に、我が国にあった両者の交流の在り方を提案し、試行する。

2)国際委員会 (委員長:小泉英明)
 引き続き「(1) 担当副会長をトップとして総合的に推進、(2) EAJの国際連携は、各国の工学アカデミーとの組織的連携を前提、(3) 限られた資源の配分を意識して、関連活動を展開」の原則に基づいて推進する。2019年度は、専門性が問われるイベントへの積極的な若手人材の派遣、国際事業の国内他機関との共催の拡大を軸に、新たな試みとしてEAJ国際委員会フォーラムを継続的に開催し、日本における国際連携ネットワークを強化する。

【国際アカデミー間連携】

(1) 国際工学アカデミー連合:CAETS実行委員会 (委員長:大江田憲治)
 今後のCAETS大会(Council Meeting中心)及び併催シンポジウムは、2019年スウェーデン、2020年韓国が予定されている。毎年、3名程度の代表団を派遣して、大会および併催シンポジウムの成功に寄与し、同時に各国アカデミーとの連携を深耕する。専門性が問われるテーマには若手人材の派遣を優先する。

(2) 東アジア工学アカデミー円卓会議:EA-RTM実行委員会 (委員長:三島望)
 第22回(2019年)はEAJがホストとなる。関西支部、大阪大学と連携して、「医工連携」を深化させる併催シンポジウムの開催を企画する。11月末から12月に大阪大学での開催を計画する。

(3) 欧州交流委員会 (委員長:永野博)
 ドイツ工学アカデミー(acatech)、英国王立工学アカデミー(RAEng)、スウェーデン王立工学アカデミー(IVA)などとの連携の発展を相互に検討する。また、お互いの活動における経験を交流し、工学アカデミー活動の発展に貢献する。

【国際人材育成】

(1) 日米先端工学シンポジウム:JAFOE実行委員会 (委員長:村上秀之)
 次回は2020年に米国で開催する。その準備を全米工学アカデミー(NAE)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と連絡を密にして進める。

(2) 豪若手研究者交流促進事業:ERLEP実行委員会 (委員長:長井寿)
 若手リーダー人材派遣交流事業の継続的発展、64名の同窓生を財産にした次段階事業の設定などを豪州理工学アカデミー(ATSE)と連携して模索し、ERLEP同窓会による学際シンポジウムを開催する。2019年は八大学工学系連合会、北海道大学と連携して、10月に北海道大学での開催を計画する。

【その他】

(1) STS forum工学アカデミー会長会議:AEPM(京都)では、いままでの「工学教育」「工学倫理」に関する意見交換の結果を纏めた「AEPM京都宣言」を、国内外に広める活動を展開する。

(2)CAETS加入水準に発展しようとする他国の工学系アカデミーを支援し、連携活動を展開する。
 

3)人材育成委員会 (委員長:橋本正洋)
 工学(エンジニアリング)における人材育成にかかわる提言のとりまとめ、発信などの活動を、文理融合の実現を図りながら、産学官の連携によって、総合的な視野と中長期的な視点をもって戦略的に進める。2019年度は、「未来社会と工学教育」プロジェクトを八大学工学系連合会ほかと連携して進める。

4)若手委員会 (委員長:関谷毅)
 若手会員が中心になって、多世代連携の下に、持続可能な社会の実現や競争力強化に向けた調査研究や社会との共創活動を進め、これらを通じて相互研鑽やネットワーク形成を図る。このために、若手活動企画推進グループを立ち上げ,計画的かつ持続的に活動する体制を強化する.また、新規若手会員を推薦し、EAJの発展に貢献する。2019年度は、急速に進展するデジタル革命に関するEAJ の取り組みについて、活動計画を提言する。

5)ジェンダー委員会 (委員長:渡辺美代子)
 委員の増強を行い、引き続き、研究開発と産業応用にジェンダーの視点を強化する戦略・施策を提案し推進すると共に、EAJ会員のジェンダーバランスについても検討する。特に、EAJ女性会員増強に関する施策を早急に検討し、その改善策を提案・実施する。

6)広報委員会 (委員長:林秀樹)
 EAJニュースレターの定着化を図るとともに、EAJ News等の刊行物のネット配信を開始する。また、メディアの協力を得るための広報活動(メディア懇談会等)を実施する。さらに、ネットを活用した会員間のコミュニケーションを活発化できる仕組みについても検討する。

3-2 支部活動

支部・地区での特徴ある活動を中心に、広く事業展開を目指す。支部・地区発の提言・提案プロジェクトの掘り起こしも奨励する。

1)北海道・東北支部 (支部長:宮城光信)
 支部活動方針の審議のための3回の支部理事会を開催する。合わせて講演会、見学会、懇親会を開催する。さらに、支部会員向けの情報の伝達方法の改善、調査研究プロジェクトの立ち上げの検討、各県の支部会員の増強計画の推進などを図る。

2)中部支部 (支部長:林良嗣)
 運営委員会を4回程度開催する。EAJ中部レクチャーを4回程度計画する。適宜、共催による講演会開催を検討する。また、EAJ中部通信を発信する。

3)関西支部 (支部長:西尾章治郎)
 運営委員会を3回程度開催する。講演会を2回(6月20日 第2回 京都地区、年11月以降 第3回神戸地区)開催を計画する。また、11月末~12月初旬 東アジアラウンドテーブルミーテイング(EA-RTM)に参画する。

4)九州支部 (支部長:梶山千里)
 (1)総会・理事会 各1回、(2)講演会 1回、(3)工業高等専門学校への出張講演会 1回、(4)九州工学教育協会との共催事業 シンポジウム 1回の開催を計画する。さらに、運営委員会(仮称)新設を目指し、会員拡大に取り組む。

5)その他
 その他の地区においても、地区講演会の開催などを通じて、地域の活性化の足がかりと会員増強に努める。なお、引き続き会員ゼロの県をなくす努力を継続する。

収支予算

【基本方針】
 2019年度は、前年度と同様に、委員会、支部が中心になって活発な事業活動を展開する。このために、前年後の実績をベースに新規施策分などを加えて予算枠を設定した。予算の執行段階でのさまざまな状況の変化に対しては、予備費の活用と共に必要に応じて理事会で対応する。

【事業活動収入】
 2019年度は、会費収入の増加および負担金収入を見込み59,000千円とした。再生可能エネルギー国際会議が昨年度終了し寄付金分が減収になる。

【事業活動支出】
 政策提言、国際活動、人材育成、支部活動、広報活動などを引き続き積極的に展開すると共に、新たに若手委員会などの活動費を加えて59,236千円を見込んでいる。

【当期収支差額】
 これらにより事業活動収支差額は236千円の赤字になる。一方、投資活動で退職金給付引当預金取得支出417千円、予備費1,000千円を計上し、当期収支差額は1,653千円の赤字になる。

【次期繰越収支差額】
 次期繰越収支差額は28,595千円になり、当面の活動に必要な繰越金は確保できている。

 

組織・運営