就任ご挨拶(初代会長)小林 宏治

日本工学アカデミーの発足にあたって

日本電気株式会社 会長
小林 宏治

我が国は戦後、政府・産業界をはじめ各界の目覚ましい活躍、特に産業技術の革新的な展開により、画期的な経済発展を遂げ経済大国と呼ばれるまでになりましたが、昭和50年代に入り我が国の将来の発展と国際社会への貢献を推進するためには、科学技術の基盤の確立と拡大強化、先見性・創造性豊かな学問・技術の創出を図るべきであるとの気運が高まって参りました。これに対応して欧米における「工学アカデミー」のような機構を我が国においても設立すべきであるとする動きも醸成され、政界・学界において二、三の試案が公表されるに至りました。
「工学アカデミー」に関するこれらの試案はいずれも官主導型の機構でありましたが、我が国においては学界や業界の意向が十分に反映され得る民主導型の機構が望ましいという観点から、昭和58年11月に有志が集まり「工学・技術振興懇談会」を発足させ、数多くの会合を重ねて工学アカデミーの設立に関して審議を行いました。さらに昭和60年10月には、この懇談会を発展させて「日本工学アカデミー設立企画委員会」を発足し本格的に準備に入りました。
この委員会で再び討議検討の結果、大学・民間・官界等において工学の研究・技術開発・産業の振興等に著しく貢献した広範かつ優れた見識を持つ指導的立場の人々が、自己の所属する組織を離れ、あくまで個人としての立場で相集い、当面会員の会費のみで運営する「工学アカデミー」を設立することが望ましいということになりました。
このような背景と経緯のもとに今回漸く「日本工学アカデミー」が発足することになったのであります。本会は設立の目的を踏まえて、「創造的な研究開発の推進」・「基礎研究の強力な展開」・「工学および技術の分野における国際交流」を活動の柱として種々の調査・審議を行い、必要に応じて官界・産業界・学界に対して提言を行って行くつもりであります。これらの活動を進めるに当りまして会員をはじめ関連各界の方々の御協力、御支援を切に希望するところであります。

(EAJ NEWS No.1 1987年8月)