就任ご挨拶(7代会長)小宮山 宏

会長就任にあたって

株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏

このたび日本工学アカデミー会長という大役をお引き受けすることになりました。昨年副会長に選任されてから日も浅く、まだまだ学ぶべきところも多いのですが、当法人の発展のために微力を尽くす所存です。
これまで私は、日本は「課題先進国」であり、その課題を克服して「課題解決先進国」になることによって、新しい活路を拓くことができると述べてきました。またその解決のための重要な視点の一つとして、 「多様性」を挙げています。一般論として課題を論じるのではなく、地域の特性に応じた解を見出すことが競争力の源泉になります。もう一つの視点として、日本をはじめ先進国において人工物が飽和状態にあり、ビジネス環境や成長モデルが従来とは異なるものに変貌しつつあることも挙げられます。これからの日本の活力は、そうした人工物飽和時代において、どのように我が国の強みである「ものづくり」の技を発揮していくかにかかっているように思います。また「どう」作るかだけでなく、「何を」作るかという点においても新しい力を培う必要があります。私は目下そうした考えのもとに国家的規模の活動を進めることに心を砕いています。
翻って日本工学アカデミーに目を転じましょう。先人諸氏のたゆまぬ努力の結果、多数の有識者を擁する知的集団に成長し、活発な政策提言、多彩な国際交流をはじめ、多様な活動が展開されています。改めて先達の皆様に敬意を表し、その衣鉢を継ぐことの重みをかみしめています。
科学技術及び関連分野で指導的立場にある人が、まったく個人の立場で自主的に参画し、科学技術者としての良心にのみもとづいて行動し、国家組織や営利目的の企業とは厳しく一線を画するという姿勢には清々しいものさえ覚えます。しかしその一方で、そうした自主的な活動の成果が、「日本工学アカデミーの使命」に謳っているように、科学技術の進歩や科学技術と社会との関係の維持向上にもっと貢献するためには、国家政策への反映、社会への啓蒙活動など、さらに力を注ぐ必要があるでしょう。昨年度発足した新政権に対する積極的な働きかけなどは、その意味で一石を投じるものであったと思います。国際交流の重要性も謂うを俟ちません。限られたアカデミーの資源をどのような形で国際交流に投入するのが最適であるかを熟考しながら、効果的に推進してまいります。
これらのアカデミーの活動は、私が夢に描いている21世紀の日本や世界を支える活動にも相通じるところがあり、どこかに接点を求めることができそうです。また地方の活性化を実現していく上で、アカデミー会員の力を借りることができれば、地区活動活性化の一助にもなると期待しています。
私は財政健全化という大きな課題を引き継いでいますが、収入増、資源の最適配分という両面から鋭意取り組んでいきます。個人会員、賛助会員拡大も引き続き努力してまいりますが、そのためにも、会員であることが誇りであり、喜びであるようなアカデミーにできればと念じています。もう一つ、新法人化も大きな課題です。一般あるいは公益社団法人のいずれを選択するかは、当法人のあるべき姿や将来の活動内容にも密接に関わっていますので、会員の皆様のご意見も十分拝聴しながら進めてまいります。
山積する課題こそ未来の成長の源泉と捉えて、新しいパラダイムを構築していく覚悟でいます。皆様の温かいご理解、ご支援を心からお願い申し上げます。

(EAJ NEWS No.134 2010年6月)