就任ご挨拶(8代会長)阿部 博之

会長就任にあたって

国立研究開発法人科学技術振興機構 特別顧問
阿部 博之

この度、はからずも会長を拝命することになりました。小宮山会長の就任時から見て大幅に高齢化したことは決して好ましいことではありませんが、お引き受けした以上は精一杯努力する所存ですので、よろしくお願いいたします。
まずは日本工学アカデミーの歴史をつくってこられた歴代会長をはじめとする諸先輩のご見識とご尽力に心から敬意を表します。新会長として、これらの重みを大切にしていきたいと考えます。
さて工学系アカデミーの特色の一つは、産業界からの会員が学術界とともに大きい割合を占めていることです。しかしながら日本工学アカデミー(EAJ)の現状は、大学が57%、企業が18%です(2016年4月1日現在)。因みに全米工学アカデミー(NAE)でも企業会員の増強には苦心をしているようですが、EAJに比較すれば、構成率ははるかに大きいといえます。一方EAJの女性会員はようやく4%を越えました。さらに高い目標に向かって進まなければなりません。
もちろんEAJは、これまで会員の増強についてさまざまな努力をしてきましたが、前述の状況をも踏まえ、さらなる増強に向けて皆様のお知恵をいただきたくお願いいたします。
「科学技術の状況に係る総合的意識調査」(文部科学省NISTEP定点調査2015)報告書が、さる2016年3月31日に刊行されました。大学、公的研究機関、企業などによる定点調査です。
第4期科学技術基本計画期間中(2011~15年度)に、課題達成に向けた取り組みには一定の進展が見られましたが、一方大学や公的研究機関における研究活動の基盤への危機感が増していることが改めて明らかになりました。このような危機的な状況は、論文数などにおける日本の地位の相対的な低下として定量的にも裏付けられています。その要因として、たとえば、若手教員・研究者が長期的な展望を持って独立して研究に打ち込める環境整備が遅れていることが挙げられています。また厳しい財政状況の中、公的投資の成果が問われるのは当然ですが、短期的な成果が求められる傾向が過度になっているとの指摘です。将来ノーベル賞につながるような独創的な研究成果が減少することが懸念されています。
以上は指摘事項の一部に過ぎませんが、為政者をはじめとする関係各位にご理解をいただかなければならない一連の深刻な調査結果であり、EAJとしても看過すべきでないと考えます。先ずは話題にしていただきたくお願いいたします。
小宮山会長は、任期1年目で東日本大震災に遭遇し、最後の年に熊本県を中心とする深刻な地震災害に見舞われました。その3期6年間、様々な課題に対してリーダーシップを発揮され、成果を挙げてこられました。心から敬意を表し、また引き続きのご指導をお願いし、私の会長就任のご挨拶といたします。

(EAJ NEWS No.166 2016年6月)