2016年 年頭のご挨拶

年頭のご挨拶

小宮山 宏会長
皆さん、明けましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶申し上げます。
世界では、少し前には想像もできなかったようなことが起こっています。米国では左と右とが勢いを増し、これまでの流れを牽引してきた中道が押されまくっている印象があります。世界のエンジンとして経済成長を引っ張ってきた中国は、「中進国のわな」に陥った可能性がありますし、イスラム国はこの先いったいどうなるのでしょう。人類の叡智を代表すると目されるヨーロッパはテロの恐怖と闘い、いったいその理念を貫けるのでしょうか。
良いニュースもあります。この原稿を書いている現在、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)がパリで開かれています。合意の兆しすらもなかった二酸化炭素削減に青ランプが灯った、とIEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)はそのレポートで述べています。理由は、エネルギー効率向上のための施策を多くの国がとり始めたこと、再生可能エネルギーのコストが急激に下がったことなどで、自ら目標を宣言する方式ながら参加国の目標を合算すると、気温上昇2.7度になることなどです。2.7度というのは科学者が主張する2度以内ではないけれど、今一息のところです。
世界は複雑の度合いを深め、変化のスピードを増しています。これらの原因のすべてが技術だというわけではもちろんありませんが、少なくも技術はさまざまな形で関わっています。シリアで使用されている各国の兵器や自爆テロの装備も技術の粋を集めるがゆえに殺傷力を増しています。気候変動はもちろん、高齢化社会も文明の一つの側面で、技術は大いに関与しています。原因にも関係しているし、答えを出すことにも関係せざるを得ないでしょう。
工学の果たすべき役割の重要性に議論の余地はありません。要は私たちがそれを担い得るか否かという問題でしょう。そういった思いで会長をお引き受けし、早6年が経過しようとしています。この間、アカデミーの体制を強化すべく努力してまいりました。まず、理念を整理しました。北海道・東北支部、九州支部を立ち上げ、今東海支部立ち上げを模索しております。若手の育成や国際関係の強化に勤しんでおります。活動の強化が先だろうという思いで控えておりました会員拡充にも乗り出しました。道半ばですが、成果は上がりつつあると評価いただけるのではないでしょうか。少数精鋭の事務局の奮闘には本当に頭が下がります。ご協力いただいた会員諸兄にも心より感謝を申し上げます。
現在、最も力を入れていることの一つが工学活動の拠点を作ることです。激しく変化する社会に対応する技術システムの創造と、それを担う技術者の育成は急務です。技術の役割を社会に御理解いただくのは簡単ではありません。私達自身にとってもそれが容易ではない状況なのですから。
こうした諸々を踏まえ、産業技術館(仮称)を創設しようとの意見がまとまってきました。現在、具体化に向けて関係する方々と相談しており、何とかめどをつけて次期執行部に引き継ぎたいと考えています。残りわずかとなった任期ですが、微力を尽くしますので一層のご協力をお願い申し上げます。

2016年1月

(公社)日本工学アカデミー会長

小宮山 宏