2015年 年頭のご挨拶

年頭のご挨拶

小宮山 宏会長

新年おめでとうございます。
2014年のノーベル物理学賞が、赤﨑勇、天野浩、中村修二の三氏に授与されたことは、日本の工学分野にとっても誇らしいニュースでした。受賞対象は、「明るく省エネ型の白色光源を可能にした効率的な青色発光ダイオード(LED)の発明」。エジソンによる白熱電球の発明以来、省エネという今日の社会的課題に対応する新しい光を得たことは、まさに人類への貢献です。2000年以降に限ってみると、日本人の受賞者数は米国、英国についで第三位です。アベノミクスの成長戦略に対する物足りなさが取り沙汰される昨今ですが、ノーベル賞の受賞実績を見れば、日本の科学技術の底力を改めて見る気がします。
さて、ノーベル賞に限らずこうした受賞においては、必ず別の誰かがもらうべきであるといった議論が沸き起こります。もちろん、審査過程でも侃々諤々の議論がなされているはずです。特に工学分野は、一つの研究開発テーマに関係する人間が多いことから、貢献者を特定することに相当な困難を極めることは想像に難くありません。工学分野での貢献とは、単に原理の解明だけでなく、実験方法の開発、製品プロトタイプ開発、より効率的な製造方法の開発、安全性の確保など多岐にわたります。
今回の青色LED開発による受賞にしても、赤﨑氏が、窒化ガリウム(GaN)が青色LEDになることを確信し、天野氏とともに1500回以上もの実験を経て、それまでほとんどの研究者が困難であるとしていたGaNのLEDの作成に成功します。その後、中村修二氏が製造方法についていくつかの新機軸を導入し、発光効率や生産性を飛躍的に向上させます。そして、企業による開発が本格化し、一気に照明やディスプレイなど多様な製品に応用されていくのです。
今回の受賞は、工学分野での成果というものが多数の英知の連鎖であるということが良く理解できる内容といえるでしょう。そして、一つ一つの英知は、実は愚直なまでの地道な努力の賜物であることも、その開発ストーリーからうかがい知れます。かのスティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学の学生を前にしたスピーチで、“Stay hungry, stay foolish”、つまり「追い求め続けろ、愚直であり続けろ」という言葉を贈ったことが思い出されます。
信じた閃きを愚直に追い求め続けること。日本の科学技術の底力とは、こうした工学の営みの本質に迫ることができる粘り強い研究者の層の厚さにあるのかもしれません。既存の成長戦略は不十分だ、今後の成長戦略はかくあるべしといった議論が様々にありますが、日本「再創造」のための成長は、何より人任せやお上任せで進むものではないという気概が必要です。我々、工学に携わる者としても、それぞれの立場で社会課題解決に向けたテーマやミッションを見出し、ぶれない営為を続けていくことが求められます。そして工学アカデミーとしても、このような工学の特色や魅力を追求し、次世代に発信していくことが大きなミッションの一つであると考えます。
本年も、皆様のアカデミー活動への一層積極的な参画を期待しております。

2015年1月

(公社)日本工学アカデミー会長

小宮山 宏

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