第3回〈通算第19回〉 定時社員総会における会長挨拶

 2014年度は、赤﨑勇、天野浩、中村修二の三氏のノーベル物理学賞受賞をはじめ、末松安晴氏と高橋裕氏がそれぞれ2014年と2015年の日本国際賞を受賞されるなど、日本の工学分野にとって、誠に誇らしいニュースが続きました。
 こうした功績にふれるたびに、やはり工学というのは社会とのインタラクションの中で育まれるものであるということを再認識させられます。例えば、LEDは省エネ、大容量長距離光ファイバー通信用半導体レーザーは高度情報化という社会的課題に応えるものですし、総合治水という流域管理手法はそれまでの河道を中心とした治水の限界を突破するものでした。
 日本工学アカデミーにおいても、狭い技術論に拘泥することなく、今日的な社会課題や、あるべき未来社会のビジョンなどを踏まえた議論が活発化しています。また、決して良好とは言えない日中、あるいは日韓の国際関係の中でも、アカデミー間では、それまでに築き上げた関係を損なわないばかりか、むしろ発展拡大をしているという状況です。議論や交流の幅と密度がアカデミーのパフォーマンスを決めるのだとすれば、2014年度も質的な向上があったと言えるでしょう。加えて2014年度は、そうした議論を踏まえた提言活動が活発であったことも特筆すべき成果です。
 2014年度の主な成果を概観すると、まず二つの提言を行ったことが挙げられます。一つは、東電福島第一原発汚染水問題への対応に関するもの。二つ目がインフラのメンテナンスマネジメントシステムの構築に関するものです。これらの提言は、社会的な要請を踏まえつつ、工学者としての知見と経験にもとづき、具体的かつ時宜を得た内容で発信することができました。今後、提言を契機として、アカデミー内外での議論の深まりやアクションに展開していくことを期待します。
 次に、国際交流では、2014年 9月に第17回東アジア工学アカデミー円卓会議が韓国・済州島で開催され、当アカデミーからは小泉英明副会長をはじめとする7名が参加しました。18年間にわたり培ってきた関係を維持することについて、日中韓三カ国の想いは共通で揺るぎないものがあります。今回の参加者もその点を改めて実感したようです。その他、国際工学アカデミー連合総会(CAETS 2014)(2014年 6月、中国・北京)への参加、第12回日米先端工学(JAFOE)シンポジウム(2014年 6月、東京)、日豪若手研究者交流促進事業などを実施しました。
 また例年と同様に、シンポジウムやフォーラム、意見交換会など、議論や交流の多様な機会を持つことができました。東京での開催だけでなく、地方支部での活動も活発になってきています。
 このようにアカデミーの活動は質・量ともに充実しつつあります。一方で、困難を極めるのが財務問題です。活動を活発化させ、それを財務改善へつなげるというのが、私が会長に就任して以来の基本戦略です。今年は、いよいよ財務改善に取り組みます。会員の皆様におかれましても、是非、御協力のほどお願い申し上げます。

2015年 6月

(公社)日本工学アカデミー 会長

小宮山 宏