第12回 通常総会における会長挨拶

 只今ご紹介頂きました会長の中原でございます。
 本日は皆様方ご多忙中のところ日本工学アカデミー総会後の懇親会にご出席を賜り有難うございました。
 ご高承のように我々を取り巻く世界の環境は、100年に一度の経済危機とまで言われるように、この一年の内に激変いたしました。日本のGDP成長率はマイナス3%以下となり、国際収支も大幅な赤字となりました。政府は44兆円もの赤字国債を発行し、14兆円という巨大な補正予算を投入してこの不況から脱出を図ろうとしています。この一部の3,000億円が研究開発投資に割り当てられるとの話で、大学・国立研究所は思いもよらなかった膨大な予算増に嬉しい悲鳴をあげるという異常な状態となりました。
 本日の総会特別講演で、総合科学技術会議の相澤議員殿より、この間の事情及び第4期科学技術基本計画の構想のお話を伺い、大変参考になりました。日本としては研究開発の成果を産業のイノベーションにつなげて大いに利益をあげ、借金の返済をせねばならぬという未曾有の試練を受けることになります。
 また地球環境問題が深刻であるということが、世界中で認められつつあります。一昨年のCAETS 2007 Tokyoで議論しました「環境と持続的成長」が出発点でありました。その後事態は遥かに深刻化して、「クールアース50」と「世界同時不況からの生き残り」の両立が喫緊の課題となりました。また環境に加え、豚インフルエンザなど世界政府的問題が日常茶飯事となりつつあります。
 先程の総会でご報告しましたように、日本工学アカデミーは、昨年度末で会員数656名、内女性会員は10名となり、僅かながらも前年度を上回り、過去最高となりました。昨年度は新会員30名を迎え平均年齢も70.4歳と0.3歳若返りました。先程の総会でご説明致しましたように、日本工学アカデミーの昨年度の主な活動は、国内ではエコ・イノベーションに関する経産省からの受託調査、低炭素社会やリーダー人材育成などについての提言作成、地区活動等であり、国際活動としては、日米先端工学シンポジウム、日英シンポジウム、日仏環境会議などの国内開催、CAETS年次総会、東アジア工学アカデミー円卓会議への出席、その他オーストラリアでの電力に関するワークショップをはじめ幾つかの海外国際会議への招聘応諾などがありました。
 また総会で財政状況について詳しくご報告しましたように、昨年度の日本工学アカデミーの収入は、個人会費が2,300万円、賛助会費が2,500万円でありました。世界同時不況のせいにするわけではありませんが、いずれも前年度より目減りしております。今年度は一層厳しい状況になるものと懸念しております。
 今年度も、内外の活動をさらに強化して行きたいと思っておりますが、そのためにも、収入を増やす一層の努力が必要です。各委員会・作業部会などにおいても、限られた資金を有効に活用するとともに、助成金その他資金確保を図ることも併せて企画して頂きたいと存じます。また特別専門委員任命制度の新設、会員選考委員会の改革実施など、実力ある会員の増強、有力賛助会員にとり魅力的な企画の推進などに期待しております。会員の皆様方一人ひとりのご協力と温かいご支援をお願い申し上げます。
 現在日本は、地球温暖化対策の2020年目標の達成を目指しつつ、100年に一度という世界不況からの回復を図らなければならぬという危機的状況であります。また日本開国後150年間で第三回目の国家存亡の危機といわれる日本の国際的存在感喪失も深刻な問題であります。これらの危機を工学技術等により如何に解決していくか、適切な提言を産官学に発することが日本工学アカデミーの使命であると思います。
 2009年度は、日本工学アカデミーの会員の皆様方の豊富なご経験を世に伝えていくための正念場の一年だと思います。会員の皆様方のご指導・ご鞭撻・ご協力を心よりお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせて頂きます。ご清聴有難うございました。

2009年 5月14日

(社)日本工学アカデミー 会長

中原 恒雄