2008年 年頭のご挨拶

 皆さん明けましておめでとうございます。
 昨年10月下旬には、日本工学アカデミーは、四半世紀に一度の日本におけるCAETS総会と国際シンポジウム「環境と持続的成長」の主催を2007年CAETS会長の西澤潤一名誉会長と共に担当いたしました。二十数カ国より約280名の参加者がありました。参加各国の協力と好評をえて、無事成功裡に終了することが出来ました。特に総会終了と同時に共同声明を満場一致で可決できたことは、昨今の微妙で複雑な東西南北の国際政治情勢を考えますと、幸運であったと思います。ここに献身的なご協力を頂いた皆様方に厚く御礼を申し上げます。
 昨年の新年のご挨拶で、日本は技術立国と共に投資立国を目指すべきだと申し上げました。今年は日本経団連会長が「日本は国民総所得を目標とし、10年以内に所得水準の世界最高を目標とするように」政府に求めたと報じられています。今更、悪名の高くなった金融工学科でなく、投資工学科が設立されてもおかしくないところです。
 日本工学アカデミーも日本の名誉回復には大いに貢献しなくてはなりません。そこでこの機会に日本工学アカデミーの存在理由について、もう一度三つの角度から反省をこめて考えてみたいと思います。
 一つ目は、日本工学アカデミーの使命の確認であります。現在世界には三つの謎があるとされています。宇宙の謎、生命の謎、物質の謎の三つであります。これらを解明することは人類にとって極めて重要なことであり、科学アカデミー及び自然科学の学会はこの追究を任務とすると思います。一方世界には三つの現実が存在します。地球環境の現実、人間社会の現実、経済の現実の三つであります。日本工学アカデミーはこの三つの現実と三つの謎を同時に踏まえて、人類が生き残るための具体的な知恵を提供するのが使命だと思います。
 二つ目は、日本工学アカデミーは真理を追究する学会ではなく、同じ志で行動する専門家の集まりだということであります。会員相互が同じ目標に向かって共同して行動することが基本だと思います。これにより、世間からの信頼を勝ち取り、科学的に誤った風評に対して、勇気を持って是正していく事が出来ます。原子力、遺伝子操作食料、陪審員の判断、マスコミの行き過ぎた営業意識など最近日本工学アカデミーが活躍すべき社会問題が急増してきております。
 三つ目は、日本工学アカデミーは日本を代表する非政府組織だということであります。これは反政府ということではなくて、より高い立場から、現実的に政府では思考や実行が困難な課題について、日本工学アカデミーが指導性を発揮して、社会や政府のために貢献するという意味です。そのためには、同様の立場にある外国の同志の工学アカデミーと協力し、共通の目的を果たす方が得策であります。その意味で、CAETS、日米、日欧、東アジアなどの多国間及び二国間の工学アカデミーとの交流は極めて大切で、これに一層力を注いで行きたいと思います。
 少し堅苦しい話となりましたが自己反省をこめて日本工学アカデミーの方向を確認させて頂きました。
 会員の皆様には、2008年もご健康に留意され益々のご発展をされるようにお祈り申し上げます。また多くの課題を抱えた日本工学アカデミーに益々のご指導とご鞭撻を賜りますようにお願いいたしまして、私の新年のご挨拶と致します。

2008年 1月16日

(社)日本工学アカデミー 会長

中原 恒雄