2005年 年頭の辞

 21世紀に入ったと思ったら、何時の間にか5年目を迎える。そしてこの4年間はまさに激動の4年間であった。バブル崩壊に伴う経済的な衝撃が拡大し続け、おそらく極大に近づいたともいえよう。
 今、日本は新たな出発をすべくスタートラインに立っているともいえるだろう。日本人自体は結構楽観的であり、今なお世界の一つの頂点にあるとの妄想に取り付かれているものの、世界は日本をそのようには見ていない。今にして過去の繁栄の幻影に酔い続けるのをやめて、現実をよく認識し、よく分析して、再起の道を確実に把握すると共にその目標に向かって着実に計画を実現してゆかなければなるまい。
 過去においていくつかの計画も立てられたものの、それらが予定通り展開して再起のチャンスとすることが出来たかというと、それはまた、空しい妄想に終わってしまったのではなかろうか。まだ幻想に酔っているのだ。
 昨2004年末に中国蘇州において、日中韓を中心とする東アジア工学アカデミー円卓会議が開かれた。その議題の一つは、韓国工学アカデミーから提案された工学倫理を遵守しようということであった。我が日本工学アカデミーでも、国際委員会の下、日中韓RTMタスクフォース(主査 上野晴樹会員)を中心に中国、韓国と交渉を繰り返し、「アジアの技術者の倫理に関する指針」を付属文書とする「技術倫理宣言」をとりまとめ、11月1日に日中韓三国の会長によって署名された後公表された。しかも、この席には東アジア地区のかなりの数の国々の代表も立ち会われたことであるので、署名した三国以外にもかなり大きな波及効果があるものと考えられる。
 今まさにアジア全体がいよいよ本格的に眠りから覚めつつある。百年を超えた眠りから今まさに覚めつつある獅子中国をはじめとして、アジアの経済力は新しく工業力を中心として世界の一角を形成しつつある。今後順調に展開して、欧米と並ぶ世界三大経済圏や工業圏を形成するものと考えられる。
 この期に及んで、日本の経済立ち直りがまだ本格化していないのは、全く落胆すべきことであるが、逆に言えば、21世紀における日本の展開は、実は単独ではあり得べきものではなく、日中韓三カ国、更にはそれを取り巻くアジア圏全体ではじめて可能になるべきものではないだろうか。死語となってしまった大東亜共栄圏再来であるが、いろいろの批判はあるが、その根本においてその思想自体には全く誤りはなく、ただ、いつも自国中心主義押し付け共栄であったところだけが問題だったのである。
 今にしてまさに正しい大東亜共栄の実を挙げることこそ日本の繁栄の唯一あるべき姿なのである。環境維持という大前提が出来上がってしまった以上、競争者であった欧州圏、米国圏とも相競う要素は急減し、相協力してこそ世界の平和と幸福とが存在する。ましてアジア圏としては更に緊密な協力が必要となる。その基礎は、更に多くの努力を惜しまないことであろう。第一歩の実現を喜びつつ。

2005年 1月14日

(社)日本工学アカデミー 会長

西澤 潤一