EAJ NEWS 100号を記念して

 紆余曲折を経て、国富が工業と密接に結びつくということが定説になってきたように思われる。つまり工業国家と考える方が多くなったということなのだろう。しかし、これは工業さえ良ければよいということではない。過去においては、巨大というより経済効果が大きな産業が過度に重視されて社会に歪みを与えていたことが少なくなかった。
如何に経済効果が小さくても人間社会に対してなくてはならない大きな役割を果たしてきた産業は決して少なくない。筋を正せば、そのような産業は本来、もっと経済負担になっても然るべきものであるが、担当する関係者の公共心の結果として、経済負担にならずに社会貢献を続けていることも多い。
 人間が使用するエネルギーから食糧その他の量が膨大になって来たが故に、地球に寄生させてもらってきた人類の生活が遂に地球の環境を変化させるように変貌してきて、今日の地球がある。つまり、今日、我々人間の挙動は自粛し自戒されなければならないことになる。特に大きな影響を与える因子が対象となることの多い工学では、関係者がことさら責任感を持って、自律自戒に努めなければならない。
 近年頓に考察対象となることの多くなったエネルギー問題にしても、環境問題と因果関係をつけながら考察してゆかなければならない。それなのに、依然として化石燃料問題は国力そのものとも考えられており、排出されている炭酸ガスは海底に沈着していることが確認されているとはいうものの、これを掘って利用しようと考える者、海底に吸収定着させなければ人類の明日はないと考える者等々、更には既に飽和しているから、メタン水化物が湧き上って爆発を繰り返すだろうという人など、極めて多岐多様な様相の講演が行われている。その一つ一つが、人類の存亡につながるような大変な議論なのである。
人間は太陽の子で、発生以来、太陽をはじめとする自然の加護の下で安楽な生活を続けてくることが出来た。それに馴れて人類は自らに迫り来る、自らの播いた種子の恐怖をすら実感していない。
 急速に我々工学者が、地球環境の現状についての知見を把握するとともに、今後の地球のあり得べき可能性についても正確に展望を把握することが不可欠である。
環境問題を中心に実情を把握していただくべく説明を続けてきたが、これまでは対象外とすら言われ考えられてきた人間の心象現象に関連する広大かつ強大な展開を無視する訳にはいかなくなっている。
 テラヘルツ波測定に基づく分子論的科学研究が、あらゆる意味でのセキュリティとして、21世紀社会に新技術としての強力な手段として人類に明日を与えてくれるものと期待しているが、工学分野の展開が、今や正に21世紀を左右することになりつつある。EAJ NEWSは100号を迎えたが、正に人類の生存の鍵となる神よりのメッセージと見るべきであろう。

2004年10月

(社)日本工学アカデミー 会長

西澤 潤一