将来構想

日本工学アカデミーの将来構想

日本工学アカデミーの使命及び基本方針を踏まえ、日本工学アカデミーの将来構想として、下記の通り事業活動推進の5本柱と事業基盤充実の5本柱を定める。

特に今日、工学には既存の狭い領域に閉じこもらず、越境することが求められている。このためには、工学教育では、自然科学における幅広い知識を習得するとともに、芸術や歴史、社会科学などを含む知識習得が不可欠になっており、それに見合った見直しを、教育課程、学習方法、達成度評価法などについて検討しなくてはならない。

また、産学官連携においても質的転換期を迎えている。これまでは大学等の先端技術を如何に産業界に移転するかの観点で議論されてきたが、これからは未来社会をともに構想する観点を土台にする産学官の連携が求められる。これは「未来社会を工学する」という日本工学アカデミーの基本理念に沿うものであり、われわれも新しい動きに組する。連携の在り方、研究成果評価の在り方などについて検討しなくてはならない。

会員制度の健全な発展は、日本工学アカデミーの将来を左右する。企業所属会員や女性会員の比率の向上、工学以外の人文社会科学分野も含む幅広い会員の参画が必須である。また、日本工学アカデミーが、会員自身にとって、社会のために貢献する自己実現の機会が得られ、同時に多様な会員との人脈形成や交流を通じて、多くのことを学び、会員の自己研鑽につながることが重要であり、会員のための活動を一層充実する。

さらに、日本工学アカデミーの将来構想を実現するためには、現在の予算規模は十分とは言えない。この課題解決のためには、賛助会員への一層の協力依頼に加えて、受託事業の拡大や、財団などからの支援の獲得を目指す必要がある。また、公益事業に加えて、事業基盤整備のための一般事業を設定し、その黒字化を目指していく計画を立てて実行していく。

事業活動推進の5本柱

  1. 政策提言プロジェクト活動
      日本工学アカデミーは、会費に基づく非政府組織であり、あらゆる対象に対して、専門家集団としての忌憚のない意見を表出できる独特な存在である。この特徴を生かし、重要な社会課題の解決や社会・経済発展のために、工学や産学官連携の在り方及びそれを支える人材育成に関する提言を、立法府や行政府、学術界、産業界などに時機を逸せず発信する。そのために、会員が中心になり、外部からも有識者を招聘し、多彩な人材による政策提言プロジェクトを推進する。
  2. 国際活動
      日本工学アカデミーは、創立当初から、海外の工学アカデミーを含めて、関係機関と積極的に連携し、経験の共有や人材育成などを図ってきた財産を有する。我が国の国際貢献を支える上でも、工学の国際的な存在価値を高めるための活動を、国際工学アカデミー連合の一員である専門家集団として、今後さらに発展させる。
  3. 次世代人材育成活動
      我が国では、小学生から高校生の理数教育システムとともに、大学生や若手研究者・技術者の育成に関して多くの課題があり、基礎研究力の相対的な地位の低下や、革新的なイノベーションが生まれにくい原因になっている。このような状況を打開するために、日本工学アカデミーでは、理数教育の在り方を検討するとともに、日米先端工学シンポジウムや日豪若手研究者交流促進事業などを通じて、次世代リーダーの育成事業を進めてきた経験を生かし、次世代リーダー候補たちが自己研鑽できる機会を増やすように積極的に支援し、同時に若い世代による自発的な意見発信を奨励する。次世代リーダー人材が、構想力、実行力、国際連携力、挑戦意欲、使命感などの「人間力」を高めることを期待する。
  4. 支部活動
      全国の各地で新会員の推挙と新しい支部の設立を進め、支部を中心とした産学官連携活動を通じて、それぞれの地域に根ざした共創活動を積極的に展開し、地域発の社会革新を進める。
  5. 科学技術活用能力向上活動
      科学と技術の成果を人間らしい生活や社会の持続的発展に確実に結び付けるため、日本工学アカデミーは専門家集団として、技術の負の側面を含めて、科学的な知識・情報について広範な人々と交流を図り、そのことが国民の科学技術活用能力の向上に寄与するよう積極的に活動する。これは、専門的知識を持っている者が国民各層との間で果たすべき重要な役割である。そのために、講演会、討論会などを定期的に開催し、その成果を社会の広い層と共有する。

事業基盤充実の5本柱

  1. 会員制度の充実
      狭義の工学分野に限らず、理学、生命科学や人文社会科学を含む多様な分野から会員を選考する。その際、企業所属会員比率並びに女性会員比率の向上に努める。また、45歳以下の若い世代の正会員を積極的に推挙し、組織としての活力増強を目指す。さらに、終身会員制度を定着させる。
  2. 委員会体制の充実
      分野や世代、性別などの異なる多彩な会員の参画によって、委員会の活動の質を高める。諸委員会の活動が組織全体として有機的に連動し機能し合うように適宜、組織の全体体制を見直す。
  3. 共創の拡大
      日本工学アカデミーは、自己資金に基づき活動する点で、国内におけるアカデミーの中でも、世界の工学アカデミーの中でも、異色な存在である。この特徴を生かし、世代、性別、学問領域、産学官、国境などを越えた共創のための場の構築など「つなぐ」役割を果たす。そのために、未来社会の構想づくりとそれに至る政策提言プロジェクト活動等において、広く社会に開かれた共創の場を構築する。今までの枠を超えて、大学、研究機関、学会、業界団体、新興企業などの関係機関との組織的な連携の輪を広げる。
  4. 会員の声が聞こえ、顔が見える活動の充実
      内外に向けた広報企画を強化する。また、会員同士が顔を合わせ、意見交換できる場を定期的に提供する。委員会等の活動をできる限り会員に公開する。賛助会員の一層の理解と協力を得るために、賛助会員との意思疎通を強化し、寄せられた声を活動に反映する。
  5. 財政基盤の健全化と業務効率の向上
      公益事業予算における収支の均衡化を図る。また、事業基盤整備のために、一般事業予算を設定し、その黒字化を目指す。さらに、事務局において、業務の標準化、手順化、ITの利活用などを通じた「業務改革運動」を進める。