事業計画(2018年度)

日本工学アカデミーは、創立30周年(2017年)を機に、21世紀において持続可能な発展をする社会の実現に向けた貢献をするため、基本理念、使命、基本方針を定めた。

基本理念
『人類の安寧とより良き生存のために、未来社会を工学する』

使命
『公益社団法人日本工学アカデミーは、広く大学、産業界及び国の機関等において、工学及び科学技術、並びにこれらと密接に関連する分野に関し顕著な貢献をなし、広範な識見を有する指導的人材によって構成し、人類の安寧とより良き生存に向けて、工学及び科学技術全般の進歩及びこれらと人間及び社会との関係の維持向上を図り、我が国ひいては世界の持続的発展に資することを使命とする。』

基本方針
 ①専門家集団としての政策提言活動を積極的に推進する。
 ②海外関係機関との連携・交流活動を強める。
 ③次世代の指導的人材を育成する。
 ④人びとの科学技術活用能力の向上を支援する。
 ⑤以上のために、あらゆる壁を越えた共創を拡大する。

また、これらを踏まえ、日本工学アカデミー(以下、「EAJ」とする)の将来構想として、事業活動推進の5本柱と事業基盤充実の5本柱を定めた。

[事業活動推進の5本柱]
(1)政策提言プロジェクト活動
(2)国際活動
(3)次世代人材育成活動
(4)支部活動
(5)科学技術活用能力向上活動

[事業基盤充実の5本柱]
(1)会員制度の充実
(2)委員会体制の充実
(3)共創の拡大
(4)会員の声が聞こえ、顔が見える活動の充実
(5)財政基盤の健全化と業務効率の向上

2018年度は、将来構想の実現に向けた最初の年度となる。これらの方向性を具体化していく観点から、事業計画をまとめる。

1.社員総会

 社員総会は、EAJの最高議決機関であり、理事及び監事の選任、事業計画・予算、事業報告・決算などを決議する。定時社員総会は、毎事業年度終了後3カ月以内に開催する(以上、定款より)。
 多数の会員が一堂に会する機会を利用し、会員のみならず様々な分野の専門家が、工学や科学技術と社会との関係を議論する場として、EAJフォーラムを開催する。同様に、新年賀詞交換会などにおいても、多数の会員が交流できる企画を検討し、実施していく。

2.理事会

 理事会は、会長、副会長、専務理事及び常務理事の選定及び解職、会員入会等の認否、EAJの業務執行の決定、理事の職務執行の監督などの職務を果たす(以上、定款より)。
 理事会は年4回開催する。上記の職務の一環として、支部、諸委員会などにおける活動の具体的報告、重要検討事項などに関する意見交換などを重視する。
 副会長は、会員選考、国際関係、財政・会員増強、行事・広報の事業分野を分担し、責任を持って関連事業を推進する。理事においても、副会長の役割分担を補佐していく。

2-1)会長アドバイザリー委員会 (委員長:阿部博之、事務局)
 主に産業界のアドバイザーから工学アカデミーの在り方について会長にアドバイスをいただく。

2-2)産業技術館設置準備委員会 (委員長:小宮山宏、同専門部会長:永野 博、事務局)
 産業技術館(仮称)について、科学技術館と意見交換を実施する。

3.会員選考委員会

(委員長:嘉門雅史)

 理事会の開催時期に合わせて、年度内に4回の委員会を開催し、推薦された会員候補者の選考を行い、適格と認められた候補者を理事会へ推薦する。現状維持ラインとされる50名/年入会を上回るように、EAJの役員、会員の協力を得て適格な会員候補者を発掘し、会員資格のレベルを維持しながら会員の拡充を進める。企業所属会員比率の向上(2020年度目標:30%)、女性会員比率の向上(2020年度目標:10%)について、法人会員強化委員会との連携や、新たに設置されたジェンダー委員会の支援を得て、達成に向けてより一層努力する。

4.支部および支部長会議

 関西支部設立により、4つの支部体制の下で、それぞれの地区に根差した支部活動を活発に展開し、日本の工学・科学技術全般の発展に寄与するとともに、会員・非会員の交流を図る。

4-1)北海道・東北支部 (支部長:宮城光信)
 会員・非会員の交流と新会員加入のための活動を目的として、年次計画で支部内各地での講演会・懇親会を企画しEAJの支部活動の活性化に貢献する。また、北海道地区としての自立を視野に、同地区の会員数の増加に取り組む。

4-2)中部支部 (支部長:林 良嗣)
 2018年度は、中部レクチャーを開催する(3回予定)。また、EAJ中部通信を発行する。

4-3)関西支部 (支部長:西尾章治郎)
 支部運営体制を構築し、早急に関西支部を立ち上げる。2018年5月29日に支部発足記念 シンポを開催する。その後、関西の特徴を活かした行事を企画し、支部の活性化を進める。

4-4)九州支部 (支部長:梶山千里)
 九州支部の会員増強と会員・非会員間の情報の共有を目的として、支部シンポジウムを開催する。さらに日本の工学分野で将来実質的にリーダーとなる人材育成に資する活動を行う。

4-5)その他の地区
 その他の地区においても、地区講演会の開催などを通じて、地域の活性化の足がかりと会員増強に努める。なお、引き続き会員ゼロの県をなくす努力を継続する。
 また、これらの支部活動の定着と一層の発展、展開を期すために、会長招集の支部長会議を設け、EAJの全体的な活動の在り方、支部活動などに関する意見交換と経験交流の場を設ける。支部長会議で得られた成果などは、理事会等に直ちに反映させ、全体として支部活動を支援する組織的な活動を強める。支部長会議は年に複数回開催することとし、各支部から支部長を含む2-3名が出席する。開催場所については東京にこだわらず検討する。

5.企画運営会議

(委員長:阿部博之、委員長代理:永野 博)

 企画・運営委員会を改め企画運営会議とする。機敏な対応のために、年8回程度開催する。企画運営会議は、EAJの基本方針や各委員会等の事業に関する重要課題等について、時機を逸せずかつ総合的視点から、企画・調査・検討し、必要事項を理事会に提議する。また、会長、理事会からの諮問に応じて調査・検討し答申する。各委員会等は、企画運営会議と密接に連携し、それぞれの事業がEAJ全体として生かされるように進める。

(1) 企画推進グループ (リーダー:城石芳博)
 企画運営会議及び諸委員会の活動推進のため、会員活動および事務局と連携し支援する。多様な人材がEAJに相応しい活動を主体的に実施しやすい環境・場を整備し、認知度の向上、政策提言の波及効果拡大、財政・人的基盤の強化につなげ、次の30周年に向け、世界をリードするEAJ事業基盤の構築に貢献する。
2017年度の会員アンケート、賛助会員とのラウンドテーブル・意見交換会や対外活動の結果、内外とのコミュニケーションを活発化できる企画立案が重要であることが浮き彫りになった。そこで2018年度は、プロジェクトや談話サロン候補の深耕、その年度計画立案・発信、および情報発信・普及啓発事業活動の支援の強化を図る。

(2) 次世代支援推進グループ(仮称)
 以下の具体的事業を推進しつつ、基本方針の一つである「次世代の指導的人材を育成する」のための基本戦略を構築する。

  • JAFOE 2018の運営を支援するとともに、6th Dialogue for Global Innovation、Medical IoT、SDGs医療部門、JAFOE OB会、FOSTE、STEAMアンカンファレンスなどを運営する。また、コミュニケーション科学プロジェクトで生まれた若手エンジニア・デザイナ・科学者・アーティストのコミュニティ運営を行い、STEAM教育に関する啓蒙活動を引き続き行う。特に次世代人材が日常の延長では出会う機会のない他分野の情報、様々な考え方にお互いに直接触れる場の提供を意図する。
  • 若い世代が、諸事業を自主的に企画推進(プロジェクト、政策提言、談話会、シンポ、ワークショップなど)することを支援する。
  • 学界や民間企業の若手研究者・技術者を対象にした次世代リーダー候補人材登録制度を運用し、上記を含め、様々な活動への参加を積極的に誘う。

5-1)法人会員強化委員会 (委員長:中村道治)
 わが国の持続的な発展を図るためには企業の参画が不可欠であり、賛助会員の拡大に向けた活動を継続する。2018年度は、引き続きさまざまな分野の企業に賛助会員としての参加を働きかけ、合わせて企業経営や研究開発に取り組む正会員を積極的に推薦する。これらによって、EAJの財政的、人的基盤を強化し多様な事業の推進に貢献する。特に、政策提言プロジェクトや各種委員会活動への企業会員の能動的な参加を実現する。また、産業界との対話を促進するために、賛助会員企業の幹部および担当の方々とのラウンドテーブルや連絡会を開催し、寄せられた意見を日々の活動に反映する。

5-2)政策提言委員会 (委員長:亀井信一)
 EAJは、社会が目指すべき方向性について、先見的、創造的な提言活動を強化することを謳っている。また、可能な限り会員に参加意識を持ってもらえるような機会を創出することも求められている。2018年度は、メンバーを増強して委員会の拡充をはかり、政策提言委員会として、EAJが取り組むべき先見的、創造的な提言に結び付く課題の検討とプロジェクト実施体制の立案、成果物のとりまとめのための審査・助言を行い、その結果を企画運営会議に報告する。

(1) SDGsにおける科学技術イノベーションの役割 (リーダー:武田晴夫、2016-2018)
 国連総会は「人類が2030年までに達成すべき17のゴール、169のターゲット(=SDGs)」を全会一致で採択している。その実現のために科学技術が果たすべき役割を、世界のSDGsネットワークの中で検討し、これに対する我が国の政策を提言する。2018年度は、引き続き各方面との意見交換を進め、2年間プロジェクトの総括として提言書をまとめる。

(2) 次世代コンピューティング (リーダー:金山敏彦、2017-2018)
 超スマート社会に向けて、従来技術の限界を越えるコンピューティング技術の開発競争が世界的に活発化している。この技術転換点に当たり、2030年の社会を想定して、我が国の強みを活かして取り組むべき戦略を提言する。2018年度は、提言の深化と普及に努める。このために、関係機関と連携して、各種の研究開発プロジェクトや政策への反映と、提言内容に即した研究開発環境の醸成に貢献する。

(3) 立法府と工学アカデミー (リーダー:永野 博、2017-2018)
 立法府は科学技術分野においても重要な法律の制定などにかかわることから、十分な科学技術知識を入手し、客観的に分析、判断し、政策決定に反映することが求められる。しかし、客観的な事実より、個人的信条や感情へのアピールを重視し世論を形成しようという政治文化、いわゆるpost-truth politicsが世界的に台頭している。立法府が科学的技術知識の活用能力を高めるために、EAJがどのように対応すべきかを検討する。2017年度は、国立国会図書館からの受託調査「政策決定と科学的リテラシー」において、海外のアカデミーでは、a)国会議員も含む広範な分野の専門家のネットワーク・コミュニケーションの展開のために誰もが参加できるプラットフォーム(場)を作り、その中核となっている例があること、b)政策の提言にあたっては複数の選択肢を提示していること、などを紹介した。2018年度は、この受託調査の結果を踏まえ、EAJがこれからの提言活動を行っていく際の行動規範を検討し、提言する。

(4) 海洋研究の戦略的推進 (リーダー:藤井輝夫、2017-2019)
 次代を担う若い世代に海洋に対する興味・関心を持ってもらうことと併せ、持続可能な開発目標(SDGs)やSociety5.0の実現に貢献するような、時代の変化を先取りした政策提言を策定し、社会に発信することを目指す。2018年度は、2017年度の検討結果を踏まえ、内容の具体化を進める。

(5) 安全知と安全学 (リーダー:向殿政男)
 プロジェクト立ち上げを検討し、安全学という安全に関する新しい学問の構築のための提言発出に取り組む。また、学術関係者との技術交流を広げるべく、「安全工学フォーラム」の開催に加えて、『安全工学シンポジウム』におけるセッションを企画する。

5-3)国際委員会 (委員長:小泉英明)
 2016年度に確認した「(1)担当副会長をトップとして総合的に推進、(2)EAJの国際連携は、各国の工学アカデミーとの組織的連携を前提とする、(3)限られた資源の配分のガイドラインを確認して、今後の関連活動を進める」の原則に基づいて推進する。アカデミー間連携事業にはEAJの代表団を派遣するとともに、専門性が問われるイベントに対応して積極的に賛助会員からおよび若手人材を派遣する。次世代育成連携事業については、継続性と同時に発展性が求められており、共催アカデミーおよびその他共催機関との連携を密接にして検討を進める。
 2018年度は国際委員会準備グループ(仮称)を設置し、「世界先導水準」の国際活動を展開することを目指し、新しい戦略的位置づけの国際委員会を構築するための戦略と体制強化策を検討し、2018年度末までに委員会設置を目指す。

【アカデミー間連携】

(1) 国際工学アカデミー連合:CAETS実行委員会 (委員長:長井 寿)
 CAETS大会は、今後、2018年9月ウルグアイ、2019年スウェーデン、2020年韓国、2021年アルゼンチンが予定されている。毎年、最大3名程度の代表団を派遣して、大会および併催シンポジウムの成功に寄与し、同時に各アカデミーとの交流を深める。専門性が問われるテーマには若手人材の派遣を優先する。なお、賛助会員からの代表団参加を奨励する。
(2) 東アジア工学アカデミー円卓会議:EA-RTM実行委員会 (委員長:三島 望)
 第21回となる2018年は10月中国浙江省杭州市においてAI(人工知能)をテーマとした開催が内定している。ホストの中国工学アカデミー(CAE)に対して、並行して実施予定の3国の技術協力に関する調査を含めて、準備の段階から積極的に協力する。代表団(3名程度)を派遣するとともに、専門性が問われるイベントに対応して積極的に若手人材の参加を奨励する。
(3) 欧州交流委員会 (委員長:永野 博)
 ドイツ工学アカデミー(acatech)、英国王立工学アカデミー(RAEng)、スウェーデン王立工学アカデミー(IVA)などとの連携の発展を相互に検討する。具体的には、CAETSその他の機会を積極的に活用して、共通関心テーマを見つけて具体的交流事業につなげる。

【次世代育成連携】

(4) 日米先端工学シンポジウム:JAFOE実行委員会 (委員長:村上秀之)
 2018年6月17日(日)~20日(水)に茨城県つくば国際会議場で開催予定のシンポジウム、またそれに関連する、4月14日開催予定の事前勉強会、2019年1月開催予定の事後報告会が円滑に行われるよう支援する。シンポジウム終了後も参加者のネットワーク構築が進むよう、運営委員長、実行委員と連携してJAFOE同窓会等の活動を継続させる。
(5) 日豪若手研究者環学的新学術シンポジウム:ERLEP実行委員会 (委員長:長井 寿)
 次世代リーダー人材派遣交流事業の発展形として、日豪若手先端研究者を中核とした国際連携事業の展開を目指す。そのために、2018年豪州におけるATSE-EAJワークショップを検討し、「環学的新学術フォーラム2019」へ向けた準備活動を開始する。

5-4)人材育成委員会 (委員長:橋本正洋)
 工学(エンジニアリング)における人材育成にかかわる提言のとりまとめ、発信などの活動を、文理融合の実現を図りながら、産学官の連携によって、総合的な視野と中長期的な視点をもって戦略的に進める。2018年度は、数次の委員会、シンポジウムを開催し、より議論を深め、必要に応じ中間的な報告をまとめる。

5-5)ジェンダー委員会 (委員長:渡辺美代子)
 研究開発、産業応用におけるジェンダー視点の拡大と定着のために、特に産業界の積極的な関与を引き出し、女性にのみ任せずに検討を進める。2018年度は、2018年3月開催のジェンダーシンポジウムでの議論をもとに、研究開発と産業応用にジェンダーの視点を強化する戦略・施策を提案し推進すると共に、EAJ会員のジェンダーバランスについても検討しその改善策を実行する。

5-6)広報委員会 (委員長:林 秀樹)
 広報委員会準備委員会の検討を経て、早期に新しい位置づけの広報委員会を設置する。
 EAJ内外とのコミュニケーションの活発化を目指し、2018年度も5回のEAJ NEWSの発行、年度活動報告の発行などを行うとともにその内容の充実を図る。また、文書のデジタル化を推進するとともに、引き続き英文ホームページなどホームページの充実を図る。さらに、2017年度から準備を進めてきた、会員間の迅速な情報共有・情報交換のためのメールマガジンの発行を開始する。
 政策提言などの活動の成果を国会議員、行政、マスコミ、一般市民へ効果的に発信していくための方策を講じ、EAJの外部発信を活性化する。

5-7)財政・事務機能強化委員会 (委員長:中村道治)
 財政・事務機能強化委員会の設置を検討する。既に設置した事務機能強化グループを中心に、会員活動と事務局の合理的な連携のための改善方策を順次検討する。

検討課題例:
・事務室に会員コーナーを設置する
・文書管理内規などを検討し、文書管理をスリム化する
・事務処理内規を整備し、会員による諸活動参加を促し、事務局関与をスリム化する
・事務局内の多重バックアップ体制を強化する
・事務局のIT機器等を計画的に更新し、効率的な電子事務化を目指す

収支予算

【基本方針】
 2018年度は、原則として2017年度の実績をベースに予算枠を設定した。予算の執行段階での様々な状況の変化に対しては、予備費の活用と必要に応じて理事会で対応する。

【事業活動収入】
 2018年度は、会費収入の増加及び国際会議経費を見込み70,940千円とした。

【事業活動支出】
 2018年度は、プロジェクト経費、各種委員会、支部活動費及び国際活動費として71,620千円を見込んでいる。

【収支差額】
 これらにより事業活動収支差額は679千円の赤字となるが、前年度決算が19,318千円であったことから大幅な改善となっている。

【繰越収支差額】
 次期繰越収支差額は34,796千円になり、当面の活動に必要な繰越金は確保できている。