事業報告(2019年度)

 日本工学アカデミー(以下、「EAJ」とする)は、創立30周年(2017年)を機に、21世紀において持続可能な発展をする社会の実現に向けた貢献をするため、基本理念、使命、基本方針を以下のように定めた。

基本理念
 『人類の安寧とより良き生存のために、未来社会を工学する』

使命
 『公益社団法人日本工学アカデミーは、広く大学、産業界及び国の機関等において、工学及び科学技術、並びにこれらと密接に関連する分野に関し顕著な貢献をなし、広範な識見を有する指導的人材によって構成し、人類の安寧とより良き生存に向けて、工学及び科学技術全般の進歩及びこれらと人間及び社会との関係の維持向上を図り、我が国ひいては世界の持続的発展に資することを使命とする。』

基本方針
 ①専門家集団としての政策提言活動を積極的に推進する。
 ②海外関係機関との連携・交流活動を強める。
 ③次世代の指導的人材を育成する。
 ④人びとの科学技術活用能力の向上を支援する。
 ⑤以上のために、あらゆる壁を越えた共創を拡大する。

また、これらを踏まえ、「日本工学アカデミーの将来構想」(2018年11月22日)を、以下の事業活動推進の5本柱と事業基盤充実の5本柱を含めて、まとめた。

[事業活動推進の5本柱]
 (1)政策提言プロジェクト活動
 (2)国際活動
 (3)次世代人材育成活動
 (4)支部活動
 (5)科学技術活用能力向上活動

[事業基盤充実の5本柱]
 (1)会員制度の充実
 (2)委員会体制の充実
 (3)共創の拡大
 (4)会員の声が聞こえ、顔が見える活動の充実
 (5)財政基盤の健全化と業務効率の向上

2019年度は、この「将来構想」の実現に向けて、以下の点で大きな前進があった。
1)委員会活動、支部活動のすべてにわたって、予算計画を含む「年間活動計画」に基づく自主的な活動様式が定着し、若手委員会や科学技術イノベーション2050委員会などがスタートした。また、次年度実施予定の第1回若手リーダー塾の準備を整えることができた。
2)緊急提言2019や第2回EAJフォーラム「これからの工学が果たす役割を考える」など、EAJの特質を生かした活動が活発化し、EAJの存在感を高めることができた。
3)あらゆる枠を越えて共創活動を展開できるEAJの利点を生かし、ERLEP、EARTM、CAETSなどの国際連携シンポジウム、第3回ジェンダーシンポジウム、さらには、支部主催講演会の開催など、講演会活動の顕著な進展が見られた。
4)EAJの見える化のため、ホームページも充実、EAJニュース特集号の発刊、ニュースレター配信の定着など進展し、会員メリットの向上に貢献できた。

1.社員総会

 2019年6月4日にホテル東京ガーデンパレス「白鳳の間」にて第7回(通算第23回)定時社員総会を開催した。正会員数792名のうち537名(当日出席50名、議決権代理行使487名)の出席によって、2018年度事業報告・収支決算書、会費に関する社員総会決議、専務理事及び常務理事の報酬に関する決議を議決し、2019年度事業計画・収支予算書報告を承認した。また、あらたに理事として、三菱ケミカルホールデイングスの小林喜光会員を選任した。社員総会に引き続き、第2回EAJフォーラム―これからの工学が果たすべき役割を考える―を開催した。
 来賓の細田博之衆議院議員のご挨拶のあと、IEEE次期会長の福田敏男会員から、「アジアから初のIEEE会長に選ばれて」と題した特別講演があった。続いて、半導体エネルギー研究所代表取締役 山崎舜平氏による、「デジタル革命をリードする半導体」と題した講演があり、データ駆動型社会にあって我が国の半導体、部品産業、知財戦略はどうあるべきかなど核心に迫る質疑応答がなされた。最後に、岸輝雄会員から「科学技術外交の現在とこれから」と題して講演があり、世界からの日本への高い評価と期待がある一方で、日本の課題が見えてきたこと、特に、過去30年にわたり多くの施策が実施されてきたが、結果として成果が見え難く、多くの課題が残されたままであることなどが述べられた。その後、懇親会を開催し、さらに意見交換と交流を深めた。

2.理事会

 通常理事会を5回(2019年5月15日、2019年6月4日、2019年7月26日、2019年11月20日、2020年2月5日)開催し、EAJの運営にかかわる重要事項について審議・議決した。2019年度の主な議決事項は、2019年度定時社員総会における決議案(理事候補案、2018年度事業報告と収支決算案、会費に関する社員総会決議案、専務理事及び常務理事の報酬に関する決議案)、2019年度事業計画と収支予算、正会員・客員会員の入会、賛助会員の入会、諸内規の見直し、会員選考委員選任、委員会・プロジェクト等の設置と委員長・リーダーの選任、提言案などである。主な報告事項は、各委員会、プロジェクト、支部・地区などの活動報告、他団体主催行事に対する協賛・後援依頼等の承認報告などである。事務所所在地変更登記について、6月25日、書面理事会を開催した。5月および11月理事会では、会長、副会長、専務理事および常務理事による自己職務執行状況報告がなされた。

  会長: 阿部博之
  副会長(会長代理): 中村道治
  上級副会長: 小泉英明
  副会長: 中西友子、嘉門雅史、小林喜光
  専務理事: 永野博
  常務理事: 長井寿、大江田憲治(常勤)
  理事: 有川節夫、石塚勝、王碩玉、太田光一、岡田益男、小野寺正、北村隆行、久間和生、小堀洋美、佐伯浩、坂田東一、高松洋、田中敏宏、辻篤子、辻佳子、中島義和、橋本正洋、馬場直志、林秀樹、原山優子、日野伸一、宮城光信、村上秀之
  監事: 谷口功、日野光兀
  最高顧問: 吉川弘之
  名誉会長: 小宮山宏
  顧問: 堀幸夫、青山博之、國武豊喜、伊東誼、三井恒夫、種市健、神山新一、御園生誠、柘植綾夫、松尾友矩、梶山千里、池田駿介、松本洋一郎

2-1)顧問会議 
 2020年1月22日に学士会館で開催した。4年間の活動をまとめて報告し、様々な助言をいただいた。また、役職名英語表記についても文書にてご意見をいただいた。

2-2)会長アドバイザリー委員会 
 本年は委員会開催に至らなかった。
 委員長:   阿部博之

2-3)産業技術館設置準備委員会 
 本年は委員会開催に至らなかった。
 委員長:   小宮山宏
 専門部会長: 永野博

3.会員選考委員会

 理事会の開催時期に合わせて、委員会を年4回開催し、会員候補者の入会審査を行った。正会員数は、2019年度当初の771名に対して、2019年度末には821名(2020年3月31日現在)となった。昨年見直した客員会員制度に基づき、国内に活動基盤を持つ外国籍の客員会員は17名(2020年3月31日現在)に及んでいる。さらに、昨年制定した「会員選考委員会規程」に従って選考委員会委員構成の刷新を図り、これを支える事務局体制を明文化した。

  委員長: 嘉門雅史
  幹事: 石原直、亀井信一、菱田公一
  第1分野主査: 久保司郎
   委員: 内山勝、岸本喜久雄、福山満由美、光石衛
  第2分野主査: 長我部信行
   委員: 石原直、臼田誠次郎、保立和夫、横山直樹
  第3分野主査: 西嶋昭生
   委員: 佐伯とも子、月橋文孝
  第4分野主査: 道奥康治
   委員: 天野玲子、小泉秀樹、塚原健一、西谷章
  第5分野主査: 大久保泰邦
   委員: 神本正行、辰巳敬
  第6分野主査: 桑原裕
   委員: 伊藤聡、小玉喜三郎
  第7分野主査: 長棟輝行
   委員: 小堀洋美、関実、橋本せつ子
  第8分野主査: 小林信一
   委員: 亀井信一、倉持隆雄、小山珠美、田辺孝二、橋本正洋

4.支部および支部長会議

支部長会議
 支部活動の定着と一層の発展、展開を期すために、2019年10月28日学士会館(東京)にて、第2回支部長会議を開催した。各支部から支部長及び副支部長(幹事長)、それぞれ2名の出席があり、会長、全副会長、専務理事、常務理事、事務局長を含め17名の参加となった。今回は、支部からの要望についても意見交換を行った。

4-1)北海道・東北支部 
 137名(正133、客4)/ 2019年度入会13名(正12、客1)
 ・2019年7月12日 支部理事会、講演会、懇親会 (於)弘前大学
 ・2019年9月20日 支部理事会、講演会、懇親会 (於)福島杉妻会館
 ・2020年3月30日 支部理事会、講演会 (於)Zoom開催

支部長: 佐伯浩
  副支部長: 角山茂章、岸浪建史、猪岡光
  専務理事: 馬場直志

4-2)中部支部 
 72名(正71、客1)/ 2019年度入会9名(正9)
 以下の3回のEAJ中部レクチャーを実施した。
 ・「 超伝導直流送電システムの開発 -石狩プロジェクトの概要と展望―」(山口作太郎氏、中部大学教授)
 ・「 次世代に繋ぐゼロエミッション社会」(天野浩氏、名古屋大学教授)
 ・「 技術と企業の倫理を考えるシンポジウム 日本製造業、不祥事多発の真因を探る
   技術立国日本のこれから歩むべき道とは」 (八重樫武久氏、株式会社コーディア代表取締役社長)
 非会員の出席も得て社会一般への周知にも尽力した。また、国際シンポジウムの共催、講演会の協賛、セミナーの後援も行った。特に、ローマクラブ日本が中部大学に開設された利点を活かし、同クラブ主催の講演会を後援し、また、支部の行事に同クラブの後援を得るなど、相互乗り入れをして活動の活性化を図ってきた。また、4回の中部支部運営委員会を開催し、中部支部の執行部の機能強化を図ることとした。

支部長: 林良嗣
  副支部長: 原邦彦、岩井善郎、太田光一
  専務理事: 水谷法美

4-3)関西支部 
 99名(正98、客1)/ 2019年度入会15名(正14、客1)
 ・運営委員会を以下のように3回開催した。
  3月4日、6月20日、12月16日
 ・講演会・懇親会を以下のように2回開催した。
  ・6月20日:京都大学にて開催した。(テーマ:防災関係)
  ・12月16日:神戸大学にて開催した。(テーマ:エネルギー関係)
 ・東アジアラウンドテーブルミーテイング(EA-RTM)を大阪大学にて開催した。
  12月3日:シンポジウムと懇親会
  12月4日:円卓会議とダイキンTICの見学会

支部長: 西尾章治郎
  副支部長: 八木康史
  委員: 池田佳和、尾上孝雄、狩野裕、嘉門雅史、久保司郎、小川真人、河原克己、石田明、堤和彦、石出孝、北岡光夫
  委員(幹事): 北村隆行、冨山明男、田中敏宏

4-4)九州支部 
 39名(正37、客2)/ 2019年度入会6名(正6)
 ・2019年11月7日:理事会・総会、九州大学(福岡市)
 ・2019年11月7日:特別講演会「外から見た日本の工学教育~日本の工学教育に加えたいもの~」
          (講師:松尾正人氏)
 ・2020年1月15日:工業高等専門学校への出張講演会、鹿児島高専(霧島市)
          「AI応用の最先端と今後の展望」
 ・九州工学教育協会との共催シンポジウム「若者がエンジニアを夢見るために」の開催
  第4回(Ⅳ):2019年7月9日、 第5回(Ⅴ):2020年2月10日
  いずれもJR博多シティ大会議室にて、参加者は以下のとおり。

 ・ 支部長: 梶山千里
  副支部長: 谷口功、日野伸一、山田淳、ほか、理事及び名誉理事、名誉顧問

5.企画運営会議

 2019年度内に、年9回の企画運営会議を開催し、その都度、重要課題の審議を行い、理事会審議・報告案件を上程した。なお、第8回は、感染症拡大による若手リーダー塾の開催延期を諮るため、書面審議とした。

  委員長: 阿部博之
  委員長代理: 永野博
  委員: 大江田憲治、亀井信一、嘉門雅史、小泉英明、小林喜光、長井寿、中西友子、中
村道治、林秀樹

1) 企画推進グループ 
 2019年度は、特にEAJ事業基盤強化の支援を中心に活動した。

(1)法人運営に係る活動
・財務・事務機能強化委員会と連携し、シンポジウム運営などの効率化に向け内規整備を支援。
・政策立案のための科学プロジェクトプロジェクトと連携し、渡辺記念会委託調査研究活動を支援。
・法人会員強化委員会、人材育成員会と連携し、産学官の若手リーダー塾の企画を支援。

(2)公益目的事業に係る活動
・企画委員会と連携し、第2回EAJフォーラムの企画、運営支援。
・政策提言委員会と連携し、(a)新規プロジェクト企画、科学技術イノベーション2050委員会などの立上げ支援、(b)談話サロン2回実施。
・ジェンダー委員会と連携し、サイエンスアゴラ初出展の討論会支援。
・広報委員会と連係し、コミュニケーション活性化、ネット配信支援。

リーダー: 城石芳博
  長期ビジョン・事業計画担当: 横山直樹
  プロジェクト担当: 中山智弘、藤田豊久、城石芳博
  人材育成担当: 橋本正洋
  行事企画担当: 小田俊理、長瀬公一、大江田憲治

5-1)若手委員会 
 若手委員会の定期的な開催を行い、2 ~ 3か月に一度の意見交換を行ってきた。この中では、企業や省庁からも参加をいただき、多角的な視点から持続可能な社会、未来に希望の持てる教育、企業と大学との連携などについて活発な意見交換を行うことができた。
 若手委員会が中心となった提言書「次世代マテリアルシステム」を作り上げ、理事会にて正式な公開が承認された。日本が世界的に競争力を有する材料やナノテクノロジーを活用した次世代情報産業に関する科学技術政策についての提言書を取りまとめることができた。
 若手委員会の発足経緯や取り組み、万博への想い、2050年を見据えた科学技術政策などについて、11月30日付の読売新聞(関西版)6面「広論」に掲載された。これによりEAJおよびEAJ若手委員会の活動を多くの方に知ってもらうことができた。
 現在、年度末に向けてデジタル革命について意見交換を進めている。

委員長: 関谷治
  委員: 伊藤一秀、川原圭博、永谷圭司、永野智己、古川英光、金谷一朗、中島義和、松尾豊

5-2)法人会員強化委員会 
 賛助会員の拡大に向けて活動を継続し、産業界からのEAJ活動への参加拡大と財政の健全化に貢献してきた。7月24日に「第3回日本工学アカデミー・賛助会員ラウンドテーブル」を開催し、EAJの活動報告の後、「データ駆動型社会における人工知能の開発・利活用・社会原則のあり方」について2件の講演、および「工学アカデミー緊急提言2019で訴えたこと-我が国が生き残るためには何をすべきか-」と題する特別講演を実施した。さらに、多くの賛助会員企業からの賛同をもとに、人材育成委員会とともに、若手リーダー育成塾のプログラムを作製し、賛助会員企業、アカデミアから30名を超える参加申請を得た。残念ながら、新型コロナウィルス感染症の拡大により、開催延期となった。なお、2020年3月31日現在、賛助会員数は47社となっている。

委員長: 中村道治
  委員: 石原 直、上田新次郎、松見芳男、小山珠美、榊原裕二、柚原義久、大江田憲治

5-3)政策提言委員会 
 ほぼ月例で委員会を開催し、科学技術動向や社会課題などを勘案しながら候補テーマの体系化を図り、EAJが取り組むべき先見的、創造的な提言に結び付く課題の検討とプロジェクトの探索を行った。「我が国のビジョン」、「工学の姿を考える」、「ELSI」をEAJとしての定常的に検討すべきテーマ(委員会テーマの候補)、「データ駆動社会でとるべき戦略」「レジリエンス・防災・減災」などを有望プロジェクト候補として挙げた。併せて現行プロジェクトの進捗確認を行うとともに、成果物とりまとめのための審査・助言を行った。これらの査読等を経て、公開順に「量子コンピューティング」、「SDGsの科学技術イノベーション戦略」、「コミュニケーション科学」、「次世代マテリアルシステム」のプロジェクト報告書を発表した。

委員長: 亀井信一
  幹事: 小林信一、永野博、城石芳博、中山智弘、長井寿
  委員: 淺間一、荒川泰彦、大石善啓、大澤隆男、長我部信行、片岡一則、加藤隆史、金田千穂子、中島義和、中村道治、萩原一平、原山優子、藤野陽三、三村信男、森本浩一、安浦寛人、安永裕幸

2019年度活動した各プロジェクトの進捗状況は以下の通りである。

(1) 情報社会を先導する量子コンピュータ研究開発戦略(リーダー:曽根純一) 
 次の時代のコンピュータとして期待が持たれ、欧米中で大型の研究開発投資がなされている量子コンピュータについて、開発の現状と実現へ向けた技術課題の調査を行い、日本としての施策提言の検討を行った。戦略提言素案を作成し、量子コンピューティング分野のキーパーソンとの議論を経て提言を完成させ、わが国の骨太の政策立案に貢献した。成果報告書は、4月の政策提言委員会で承認され、企画運営委員会、理事会の承認を経て公表した。

(2) コミュニケーション科学(リーダー:金谷一朗)
 工学の専門家と非専門家との間の意思疎通の問題、すなわち「情報の壁は取り払えるのか」をテーマとして実践的な調査活動を行った。本プロジェクトでは、活動そのものが成果であるため、通常の提言報告書とは様式が異なっているが、政策提言委員会での査読と、11月の理事会での審査を経て、最終版を確定し公表した。このプロジェクトは、若手の自由な発想による課題発掘型プロジェクトであり、この提言の深掘りがさらに期待されている。

(3) 次世代マテリアルシステム(リーダー:関谷毅)
 我が国が強い「材料・ナノテク技術」を基盤に、新しい科学や豊かな生活、安全安心な社会実現につながる革新的な「微小信号計測技術」の創生と、これを産業基盤の柱へと昇華させる科学技術政策の提言を行った。具体的には、訪問調査、公開シンポジウムを行い、これらを踏まえて、研究の総括、提言の検討を進めた。これらをもとにEAJのプロジェクト報告書(提言中心)を取りまとめ、国への政策提言を目指し、関係機関と意見交換を行った。5月に政策提言委員会の場で意見交
換を行い、プロジェクトの報告書を、9月の企画運営委員会、11月の理事会の承認を経て公開した。

(4) 海洋研究の戦略的推進(リーダー:藤井輝夫)
 専門・産業分野の壁を越えた、世界に先駆けた海洋国家の創出が求められている。4月に政策提言委員会とプロジェクトとの意見交換会を行った。水産資源、海洋鉱物資源、洋上や潮力など海洋再生エネルギー、海上、海中ヴィークル、海上ロジステックシステムなどの技術開発の状況について検討会議を開催し、進めるべき研究開発の方向性について提言をまとめる計画である。

(5) 政策立案のための科学(リーダー:小林信一)
 複雑化する社会では、政策的な課題発見、解決策の探索等は人の手に余ると予想され、エビデンスに基づく政策立案や経営戦略の策定へのビッグデータやAIの適用は喫緊の課題である。ここでは、試行的事例の調査等を通じて、その可能性と克服すべき課題を明らかにし、実現の方策を考察すべく、訪問調査、公開研究会(第2回、3回)を実施した。これらを踏まえて、研究の総括、提言の検討を進め、助成研究の報告書(資料的内容を含む)を印刷発行した。これらをもとにEAJのプロジェクト報告書(提言中心)を取りまとめた。

(6) 立法府とアカデミアの知的情報共有に関する調査・試行研究プロジェクト(リーダー:永野博)
 立法府はわが国においても科学技術政策の立案、実施にあたって枢要な位置を占めているばかりでなく、今後、ますます重要性が増していくことが想定されるが、現状をみると立法府とアカデミアの間で科学技術に関係する情報についての緊密な交流、特に組織的な交流があるとはいえない。その要因は立法府側とアカデミア側の双方に存在すると考えられる。そこで海外の実績を現地にて調査し、これらも参考に、我が国にあった両者の交流の在り方を提案し、試行する。過去3回委員会を開催し、報告書を取りまとめている。

(7) 未来社会と工学教育(リーダー:光石衛)
 2030年から2050年の社会的課題や科学技術の潮流を見据えつつ、国際社会に向け日本がどのように貢献すべきか、また、日本が持続的に経済発展するために目指すべき姿はどのようなものかについて議論するとともに、そのためにはどのような人材を育成し、どのような研究分野に取り組むべきかについて考察し、その結果を提言として取りまとめた。科学技術予測や人材育成に関し、国内外でさまざまな取組みが行われているが、今後、これらを継続して分析し、日本にとって重要なテーマを抽出し、アカデミーにおいて継続的に検討・提言する恒常的プラットフォームの構築を提言する。2020年4月に政策提言委員会で意見交換を行う予定である。

(8) デジタル革命時代の日本のモノづくり(リーダー:佐々木直哉)
 現在のデジタル革命が叫ばれる時代に社会が求める価値の特徴は、合理性・効率性を一つの判断基準とする社会課題解決及び個人顧客満足向上にあるとみる。こうした合理性・効率性の価値判断基準に加え、新たな価値判断基準を世界に問いかけ、定着させることで重層的で多様な価値判断基準が共存する社会システム構築を一つのターゲットとする。そのような中で、わが国が製造業を今後どのような考えの下に再興するかをEAJ の視点で検討し方向性を見いだす予定である。2月に政策提言委員会で意見交換を行った。

(9) 海洋プラスチック研究プロジェクト(リーダー:橋本正洋)
 地球規模かつ喫緊の課題である海洋プラスチックごみ問題については、元来海洋研究者等のアカデミアの指摘から近年問題の大きさが認識されるようになり、政府、産業界の解決に向けた取組が開始された経緯がある。一方、海洋プラスチックごみ問題については、その規模、内容及び地球環境と人類への影響について必ずしも科学的知見は十分でなく、また解決のためのイノベーションの方向性も明らかではないところがある。本プロジェクトは、政府、産業の関係者からのヒアリング等を通じ、その動向についてフォローしつつ、工学アカデミーとしてポイントをしぼった検討を進めていく。10月の政策提言委員会にて、活動計画案を説明し、プロジェクト発足が了承された。

(10) アジアバイオマスプロジェクト(リーダー:西嶋昭生)
 東アジアのバイオエネルギーの現状と課題、日本としての東アジア展開、バイオエネルギー戦略を委員会形式で検討し提言する。前年度の11月の政策提言委員会で意見交換を行い、「EAJメッセージシート」に提案のフレームを落とし、論点を整理する作業を進めている。

5-4)国際委員会 
 国際委員会の三原則に基づき活発な活動を展開した。特に個別事業毎に定められた委員長・実行委員長が活躍し、それぞれに着実な成果を出した。新たな試みとして、JST/JSPSのみならず、財団・大学・公立研究所・大使館と連携して個別事業を互恵的に実施。限られたリソースで実施してきた活動を拡大した。特に下記の個別事業を広範なEAJ会員のご協力の下に推進した。
【国際アカデミー間連携】(1)国際工学アカデミー連合CAETS(スウェーデンIVAの創立100周年の機会に国際会議や式典に協力し、日瑞アカデミーの連携強化を実現)(2)東アジア工学アカデミー円卓会議(来年度のCAETS主催国、韓国NAEKと連携・展開準備)(3)欧州交流委員会(上記日瑞連携の強化他)
【国際人材育成】(1)日米先端工学シンポジウム準備 (2)ERLEP後継の環学フォーラムを豪州と実施(人材育成から新工学分野開拓事業へと発展)。
【その他】(1)工学アカデミー会長会議AEPMの新展開(EAJ「緊急提言」を国際視座からレヴュー)。(2)外部組織と連携して、新たな「EAJ国際委員会フォーラム」実施

委員長: 小泉英明
  担当理事: 中島義和(情報)、原山優子(政策)、辻篤子(広報)
  委員: <個別委員会> 大江田憲治(CAETS、STSForum)、三島望(EA-RTM)、永野博(欧州)、村上秀之(JAFOE)、長井寿(ERLEP)
    <会員> 金谷一朗、伊藤一秀、杉山正和
  顧問: 岸輝雄、中村道治

【アカデミー間連携】

(1) 国際工学アカデミー連合:CAETS実行委員会 
 2019年CAETS大会は、スウェーデン工学アカデミー100周年を記念し、2019年6月24日から28日の会期で、ストックホルムにて開催された。EAJからは、小泉上級副会長、大江田常務理事、中島理事、安井会員、杉山会員、理研高橋リーダーが参加した。各国の工学アカデミー代表との情報交流に努め、2020年ホスト国の韓国及び連携を進めている豪州のそれぞれの代表との連携促進に向けた打ち合わせ会議を行った。

    ・ 委員長: 大江田憲治

(2) 東アジア工学アカデミー円卓会議:EARTM実行委員会 
 12月に第22回を関西支部、大阪大学と連携して、大阪大学にてホスト開催した。会長、上級副会長、専務理事、常務理事を含む代表団で対応した。「医工連携」を深化させる併催シンポジウムでは、水準の高いプレゼンと討議がなされ、今後の三アカデミー連携の弾みとなった。

     ・ 委員長: 三島望
  委員: 中島義和、紀ノ岡正博、高偉俊、陳飛勇、金有洙

(3) 欧州交流委員会 
 ドイツ工学アカデミー(acatech)、英国王立工学アカデミー(RAEng)、スウェーデン王立工学アカデミー(IVA)、フランス工学アカデミーと経験交流を行い、連携の発展を相互に検討した。

    ・ 委員長: 永野博

【次世代育成連携】 

(4) 日米先端工学シンポジウム:JAFOE実行委員会  
 2020年米国開催の準備を全米工学アカデミー(NAE)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と連絡を密にして進めた。

    ・ 委員長: 村上秀之
  委員: 金谷一朗、中島義和

(5) 日豪若手研究者環学的新学術シンポジウム:ERLEP実行委員会 
 豪州理工学アカデミー(ATSE)との連携事業として、10月に八大学工学系連合会、北海道大学との共催を得て、10月に北海道大学で開催した。日豪の若手リーダー人材育成事業をして大きな広がりが実現した。

    ・ 委員長: 長井寿
  委員: 杉山正和

(6) 第9回AEPM(Academy of EngineeringPresident's Meeting) at STS forum 2019 
 2019年10月5日から2019年10月8日の会期で京都にて開催されたSTS forum 2019の会期中に開催した。今回は、学長や研究所長にも呼び掛けたことで、豪、ドイツ、仏、オランダ、シンガポール、スイス、スウェーデン、タイ、韓国などから計10か国の参加があり、EAJからは、阿部会長、小泉上級副会長、永野専務理事、大江田常務理事、桑原会員を代表派遣した。「EAJ緊急提言2019:我が国の工学と科学技術力の凋落を食い止めるために」を中心課題として、国際競争力の向上、産学連携、若手育成における大学、研究所の役割を主題として、集中した意見交換が行われた。
 討議内容を全参加者の同意を得て、AEPM京都宣言(2019年)としてまとめ、EAJ WEBサイトで公開した。

5-5)人材育成委員会 
 将来の社会像を踏まえつつ、社会が求める人材像とその育成方策について議論する「未来社会を見据えた科学技術イノベーションと工学人材の育成」プロジェクトの議論を実施中。OECD、NISTEP、IIASA、SSHなど幅広い有識者から知見をいただきつつ、議論を深めているところ。年度内の中間とりまとめを目指すとともに、公開討論会を実施予定。また、若手育成のあらたな試みとして、「第1回EAJ若手リーダー塾」(4月9~10日)を企画し、プログラム作製、参加者とりまとめまで準備を整えた(なお、新型コロナウィルス感染症拡大により、4月開催は延期となった)。

委員長: 橋本正洋
  幹事: 城石芳博、横山直樹、中島義和、岸本喜久雄、石原直、金谷一朗、村上秀之、小林信一、松見芳男、島田昌
  委員: 北森武彦、滝澤博胤、大久保達也、新美智秀、北村隆行、田中敏宏、高松洋、小豆畑茂*、大江田憲治、榊原裕二、柘植綾夫、坂田東一、安永裕幸、犬塚隆志、上野晴樹、高山誠
    *非会員

5-6)ジェンダー委員会 
 委員会体制を委員8名、アドバイザー12名、学生委員4名と強化し、研究開発と産業応用にジェンダーの視点を強化する戦略・施策に関する議論を展開した。具体的には、(1)JST主催サイエンスアゴラでの将来のイノベーター養成に関する出展、(2)会長と女性参画を通じた工学の活性化について語る会(12/18)、(3)大阪大学および東京大学との共催で第3回EAJジェンダーシンポジウムにてイノベーション創出に繋がる多様性の活性化ついての議論(1/28)、(4)学生委員によるインタビューを通じたダイバーシティに関するGood Practiceの調査と発信を実施した。

委員長: 渡辺美代子
  副委員長: 辻佳子、山口栄一
  委員: 城石芳博、行木陽子、平尾明子、森勇介、森田純恵、平尾明子
  アドバイザー: 阿尻雅文、天野玲子、石原直、伊藤一秀、大野英男、大橋俊朗、小宮山宏、長井寿、長坂徹也、中西友子、永野博、丸山一平
  学生委員: 秋山茉莉子、佐々木勇輔、寺林稜平、依田みなみ

5-7)広報委員会 
 EAJ NEWSなどの刊行物のネット配信を開始した。EAJ NEWSは、4回発行し、この内2回は、「SDGs」と「AI x 医療」の特集号とし、また1回は4月に取りまとめた「緊急提言」を特集した。
 昨年発刊したEAJニュースレターが定着し、新たに「会員からの便り」コーナーを開始した。
 また、3か月に1回の頻度で広報委員会を開催。Web会議の定着による地方委員の積極的な参加があり、活発な議論ができた。

委員長: 林秀樹
  副委員長: 大江田憲治
  委員: 岡田益男、城石芳博、菅博明、辻篤子、原邦彦、山田淳

5-8)財政・事務機能強化委員会 
 会員および賛助会員からの会費に加えて、新技術振興渡辺記念会から受託事業費を頂き、収入を確保することができた。一方、年間活動計画に基づく予算制度の本格導入や、外部機関との連携による経費削減実施などにより、主要な活動を中心に健全に財政を運営することができた。余剰資金については、将来の特定事業に向けた積み立て制度(「特定費用準備資金」を制度化)のもとで管理することにした。事務機能の強化に関しては、新規職員の採用により、個人会員業務、賛助会員業務、国際、広報、経理などの役割分担が明確となってきた。スケジュール管理、共通ホルダーの活用で、効率的な事務業務が可能となってきた。また、週初めの業務打ち合わせを励行し、情報共有に努めた。また、旧式の事務機器は、見直しを進めることとした。

委員長: 中村道治
  委員: 永野博、長井寿、大江田憲治、城石芳博

5-9)科学記述イノベーション2050委員会 
 委員会では、解決すべきテーマや課題を特定し、それに向けた必要技術を特定し、そこへ向けたパスウェイを考えていくことを目指し、このロードマップおよびアクションプランの策定に向け、委員会として取り組むべきSDGsに関連したテーマを3件程度に絞り込む議論を行った。UNFCCC・COP24に向けて行われた気候変動対策に関する取組意欲の向上のための「タラノア対話」に倣い、(a)我々はどこにいるのか?"Where are we?"で現状を把握し、(b)どこへ行きたいのか? "Where do we want to go?"で今後目指すべき将来像(目標)を定め、(c)どうやって行くのか? "How do we get there?"でその達成に向けた行動の具体案を議論する というステップを踏んだ。結果、1)脱CO2など化石燃料・原料の使用を大幅に削減する技術、2)貧困・格差の解消に資する技術、3)QOLの飛躍的上昇に資する技術などを中心課題とする方向で合意されつつある。

委員長: 沖大幹
  委員: 有川太郎(幹事)、平川祥子(幹事)、有本建男、江藤学、大江田憲治、大竹暁、亀井未穂、日下晴彦、倉持隆雄、小泉英明、小林孝明、城石芳博、杉山郁夫、中島義和、永野博、藤野陽三、森尚樹、安岡善文、安永裕幸、中村道治

組織・運営