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公益社団法人 日本工学アカデミー

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川崎ひでと 衆議院議員へのインタビュー

日本工学アカデミー 政策共創推進委員会「次世代人材による国会議員インタビュー」
南澤孝太(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科・研究科委員長・教授/
日本学術会議 若手アカデミー 幹事)

左写真:インタビュー風景、中央写真:触覚伝送技術を体験いただく様子、右写真:左側 川崎ひでと議員、右側 南澤孝太教授(衆議院第一議員会館にて)

 

2026年5月12日、衆議院第一議員会館を訪問し、自民党・川崎ひでと議員へのインタビューの機会をいただきました。本インタビューは、日本工学アカデミー政策共創推進委員会の取り組みの一環として実施されたもので、国会議員と研究者との協働や交流を促進し、両者の政策共創力の向上に資する信頼関係の構築と情報共有を目的としています。

筆者(以下略):以前はNTTドコモに勤務され、現在はデジタル庁政務官なども務められるなど、デジタル分野に精通されている川崎議員ですが、現在はどのような科学技術にご関心をお持ちでしょうか。

川崎議員:AIが社会的に大きな話題となっていますが、私が重要だと考えているのは、こうした技術がいかにエッセンシャルワーカーの方々を支援できるかという点です。AIが絵を描いた、ロボットが走った、といった一過性のトレンドではなく、社会の根幹を支える産業や、そこに携わる人々がどのように技術の恩恵を受けられるか。ここが、これからの日本社会の基盤を築くうえでの重要な課題だと考えています。

―― デジタルテクノロジーの活用により、障害当事者や高齢者など、これまで社会参加が難しかった人々にも新たな活躍の可能性が生まれています。(例えば南澤がPMを務めるムーンショットで取り組んでいる「分身ロボットカフェ」では、分身ロボットによる重度障害当事者の在宅遠隔就労を実現しています https://www.youtube.com/watch?v=e5qZNkiMYOg )
一方で、このような技術が人々の日常に浸透するためには、学術、産業、医療・福祉、教育など、さまざまな領域を横断した取り組みが求められます。技術の進化が生み出す可能性を、実際のQoL向上やWell-beingな社会の実現につなげるためには、どのような取り組みが必要だとお考えでしょうか。

川崎議員:実際の現場に導入すること、そのために現場と密に連携することが極めて重要です。医療や福祉の現場であれば、医師会や介護士団体、障害分野であれば当事者団体など、実際にニーズを持つ方々と顔を突き合わせて対話しながら技術を開発し、現場に導入し、運用していく必要があります。新しい技術開発では、PoC(実証実験)までは盛んに行われますが、その先の実際の導入・運用フェーズまで取り組まれるケースは多くありません。しかし、そこまで踏み込まなければ、本当の意味で人々の生活を良くすることはできません。

―― ロボットをはじめ、日本が研究面で先導してきた技術が、社会実装の段階で停滞し、その間に海外企業が主導権を握る状況が繰り返されているようにも見えます。研究優位性を産業競争力へとつなげるためには、何が必要だとお考えでしょうか。

川崎議員:先ほどの話にも通じますが、やはり重要なのは現場導入です。PoCで終わるのではなく、実際の導入まで取り組まなければなりません。
海外では、現場導入のスピードが速く、実際の運用を通じて課題を洗い出しながら、使える技術へと磨き上げていきます。一方、日本ではどうしてもPoCで止まってしまう傾向がある。これでは産業として成長する段階までたどり着けません。

―― 日本学術会議・若手アカデミー(45歳未満の研究者の集まり)では、2026年3月に、大学とスタートアップのよりよい関係性の構築に向けた見解「学術とスタートアップを両輪としたイノベーション創出に向けて」を発行しました。
(https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf2/kohyo-26-k260317.pdf)
大学の研究成果を社会実装する手段として、大学発スタートアップへの期待が高まっています。若手研究者にとって起業も以前より身近な選択肢となっていますが、研究者が起業するだけで事業が成功するわけではありません。大学の知をより効果的に社会の発展につなげるためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

川崎議員:大学発スタートアップのみなさんは、大企業の力をもっと上手に活用してよいのではないかと感じています。
スタートアップは技術的には非常に尖っていても、組織規模は小さく、日本全国に営業や運用体制を展開することは容易ではありません。一方、大企業には、強い営業力や持続的な運用力があります。そうした部分は大企業の強みを活かし、スタートアップは自らが集中すべき領域に集中したほうが、うまくいくケースが多いように思います。
実際、大学発スタートアップの経営者のみなさんとお話しすると非常に優秀な方が多いのですが、研究から事業化、経営、営業、運用まで、すべてを一人で担おうとしているように見えることがあります。既存組織の力をもっと活用し、それぞれの強みを組み合わせることで、社会実装もよりスピード感をもって進められるのではないでしょうか。研究者のみなさんも、そのほうが自らの専門性をより効果的に社会へ発揮できると思います。

―― 若手アカデミーでは、現場の若手研究者の課題意識を「2040年の科学・学術と社会を見据えて いま取り組むべき10の課題」としてまとめています。
(https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-25-k230926-4.pdf)
政治家の立場から見て、このような学術現場の構造的課題に対し、若手研究者が取り組むべきことについてアドバイスをいただけますか。

川崎議員:私たちの世代、40歳前後の世代から、政治や行政の現場で活躍する人材が次々と生まれています。ぜひ、そうした若い自治体首長や若手議員とつながってください。商工会議所や政党が昔から青年部を設けているのも、同じ理由です。社会的影響力を持ち、実際に現場で手足を動かせる世代の横のつながりが、次の社会をつくります。社会課題の最前線にいる地方自治体の首長たちとつながり、セクターを越えて課題意識を共有し、解決策を生み出し、現場導入を進めていく。そうした動きが、社会を変える力になるのです。

インタビューを終えて

デジタル政策に数多く関わられている川崎議員へのインタビューということで、最初に私自身の研究の「触覚伝送技術」も体験いただき、和やかな雰囲気の中でのインタビューとなりました。
国会議員として活躍している同世代(川崎議員が1981年度、南澤が1982年度の生まれ)の考え方に触れる貴重な機会となり、科学技術で未来の社会をつくるためには政治との連携が不可欠であること、政治の現場は思っていたほど遠いものではないことを肌で感じることができました。政治と学術、それぞれの立場から未来をつくる若手世代の仲間として、今後も手を携えていければと思います。

2026年5月12日
衆議院第一議員会館にて

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