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公益社団法人 日本工学アカデミー

日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産学官の指導的技術者の団体です

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会長からのメッセージ

会長 小林 喜光
2024年 年頭のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
皆さんご存じの通り、昨年のノーベル賞では、ドリュー・ワイスマン氏とカタリン・カリコ氏が、新型コロナウィルスによるパンデミックに対し、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を開発し、ワクチンを実用化に導いたとして、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。ノーベル賞の選考委員会では、お二人の授賞理由について、「mRNAがどのように免疫システムと相互作用するかに関する理解を根本的に変え、パンデミック下において、社会に重要な貢献をしたワクチンの開発に不可欠だった基礎科学の発見を評価した」としています。まさに、科学・技術・イノベーションが世界を前進させる好事例であり、その柔軟な特性により、今後さまざまな病気のワクチンへの応用が期待されています。
他方、世界を見渡してみますと、パンデミックに止まらず、ロシア政府によるウクライナ侵攻、パレスチナのガザ戦争、核戦争のリスク、エネルギー・食料危機、地球沸騰化、更には従来の資本主義の延長から生まれる格差、グローバルガバナンスの後退などにより、人類の安寧とより良き生存、世界の平和と安全、そして持続的な発展が脅かされています。人類、あるいは地球は、今、その存続にとって、多岐にわたる複雑な問題に直面しています。これらのグローバルアジェンダの解決に向け、これまで何千年にもわたる積み重ねにより飛躍的な進歩を遂げてきた科学や工学への期待は、ますます高まっているのではないでしょうか。
また、我々の生活に直結する例では、COP28での世界全体の気候変動対策「グローバル・ストックテイク」への取り組み、「自動運転」や「空飛ぶクルマ」といった“陸や空の移動革命”の社会実装に向けた挑戦、さらには、高度に知的な文章を即座に作成する能力を持つChatGPTなどの生成AIの急速な進化・普及など、ハードウェアからソフトウェアにいたる様々な取り組みや技術開発が進められています。特に生成AIは、遠くない将来、人間に対峙する可能性もあり、その応用領域や社会的な影響度、人間に求められるスキルも大きく変貌しつつあります。歴史を振り返ると、蒸気機関の発明や情報技術などによる産業革命は、幅広い分野において、地球、社会、人間に大きな影響を与えてきました。その意味では、今まさに、新たな転換期の只中にあると言えます。
そういった中で、我々は、これまで細分化、あるいは世代断絶してきた情報を紡ぎなおし、常識を疑い、根源的な問題点を整理することが必要ではないでしょうか。そして、様々な技術やシステムについて、その光と影の両面を見据えながら、未来を切り開く道具として構築し、健全に発展させ、効果的に利活用していくこと、さらには、科学・技術・イノベーションが自然や人間と共生する社会の実現を目指していくことが重要ではないでしょうか。
我々は、「人類の安寧とより良き生存のために、未来社会を工学する」という日本工学アカデミーのパーパスを改めて確認し、人類の明日を信じ、自らの役割に真剣に向き合って、文理を超えた英知を結集した「総合知」(Collective Intelligence)により、自らの使命を果たしていこうではありませんか。
最後に、会員の皆様のさらなるご健勝とご活躍を祈念しまして、新年のご挨拶といたします。

2024年 1月 1日

(公社)日本工学アカデミー 会長

小林 喜光

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