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公益社団法人 日本工学アカデミー

日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産学官の指導的技術者の団体です

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会長からのメッセージ

会長 小林 喜光
安寧な社会の実現に向けて

世界では、近年、新型コロナ感染症パンデミック、ロシア政府によるウクライナ侵攻、核戦争のリスク、安全保障、エネルギー・食料危機、更には従来の資本主義の延長から生まれる格差、グローバルガバナンスの後退などで、人類の安寧とより良き生存、世界の平和と安全、持続的な発展が脅かされています。我が国に立ち戻りますと、このような問題に加え、技術立国としてのリカバリーをどうするのか、カルトや先鋭化した温暖化現象、電力の安定供給やダイバーシティの向上等、複雑で難しい問題が人々に襲いかかってきています。私は、21世紀に入り、「疫病」、「戦争」、「飢饉」といった難問から人類は解放されたと考えていましたが、いささか楽観的に見過ぎていたようで、これらに苛まれているのが現実です。人類、地球は、その存続にとって、多岐にわたり複雑な問題に直面しており、これらのグローバルアジェンダの解決に向け、これまでの何千年にもわたる積み重ねにより飛躍的な進歩を遂げてきた科学や工学への期待はますます高まっているのではないでしょうか。
人間はせいぜい70から100年で死を迎えます。仮に情報がそこで途切れるとすると、古代ギリシャ民主制のプラトン、アリストテレスの時代から、果たして個々の人間は進化してきたのだろうか、と考えざるを得ません。また、最近、人間に対峙するものともいえるChatGPTなど生成AIが急速に進化・普及し、AIの応用領域や社会的な影響度、人間の必要スキルが大きく変貌しつつあるようです。原理原則にかかわる多様な問題に直面しており、社会、人間の根源的な進化が今まで以上に求められるようになってきたのではないでしょうか。EAJは今まで以上に、“Engineer the Future”-人類の安寧とより良き生存のために、在るべき将来ビジョンを念頭に、アカデミーとしての存在意義を自覚しながら、未来社会を工学する- という高い理念やパーパスの発信とその社会実装の推進に真剣に取り組む使命があるのではないでしょうか。
かつて、政治と科学や工学は分離して考えられていました。今や、科学的エビデンスに立脚した政策立案・合意形成・遂行とその的確な評価に向け、政治は科学や工学をベースにしないと意思決定ができない、というのが常識となっています。EAJでは、立法府と科学者の政策共創の実現を図るべく、2020年7月7日に政策共創推進委員会を設置し、政策立案に係る広範な関係者との連携をもとに、国会議員および立法府関係者と科学者、メディア関係者などが協働し息の長い交流ができる場を提供し、活動してきました。2022年度には、EAJ側が話題提供、意見交換を行うという従来の形から、国会議員側からも問題提起を頂き、自由に考えを述べ合い、相互に信頼関係を築きつつ、新しい考え・政策を打ち出す形に移行しました。社会、人間の本質的な進化に向け、科学・技術成果の適切な社会実装を加速するための、新たな交流の場が構築できつつあります。
我が国では、2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行しました。一人ひとりが、従来の常識や価値観のベクトルを見直し、抜本的な変革に向けて行動する良い時期となりました。そこで2023年度には、これまでの常識を見直し、人間をどうとらえるかなど、根源的な問題点を整理し、対症療法にならないよう、着実な対処を始める年としたいと思います。人類の明日を信じ、自らの役割に真剣に向き合いながら、グローバルアジェンダについて、どこにフォーカスし、どういった形で推進していくか、それぞれの専門分野をベースとして、将来への備えに関して総合的に活動していこうではありませんか。

2023年 6月 2日

(公社)日本工学アカデミー 会長

小林 喜光

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