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公益社団法人 日本工学アカデミー

日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産学官の指導的技術者の団体です

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 「人類の安寧とより良き生存のために、未来社会を工学する」。
 言わずもがなですが、本会の基本理念です。私は産業界に身を置き、長年地球との共存を念頭に企業価値を追求してきました。私がこれまで探求してきたこの企業価値は、本会の理念と相通じるものがありますので、ここでその一端をご紹介します。

 まずアスリートにとっての「心技体」のように、企業が持続可能な成長を実現するためには「収益力、技術力、社会・環境・公益への貢献度」の3つをバランスよく追及する必要があります。これは「XYZ」の3軸(X軸:Management of Economics(MOE)、Y軸:Management of Technology(MOT)、Z軸:Management of Sustainability(MOS))で図解すると理解しやすいです。企業価値をX軸のみで計るという従来の考え方もありますが、そうではなく「XYZ」の3軸を合成したベクトルこそが真の企業価値と理解すべきだというのが私の考え方の基本です。

 このうちZ軸であるMOSは、企業の社会性、公益性、環境貢献度を示すものであり、ESGやSDGsに対応し、50年、100年単位でCO2排出削減や環境問題、社会課題の解決にどれだけ役立てるかが問われます。世界的に見てもESG投資は拡大傾向であり、気候変動などの人類の存亡に関わる環境問題への貢献要求は年々強くなっていくでしょう。このようにMOSの視点はますます重要になってきています。

 Y軸であるMOTについては、「モノ/物質」から「コト/情報」へシフトしていく社会的潮流を踏まえて、如何に価値を適切に把握するかが重要です。そこで私は6~7年前から、「z=a+bi」という複素数と同じアプローチで理解すべきではないかと問い続けています。aは「atom」のa、bは「bit」のb、iは「internet」のiで、重さのある物質(モノ)と、ネットを飛び交う重さのない情報(コト)が組み合わさることで、今日的な価値が生じると見ることができます。この複素数の大きさは絶対値、 で表現できます。デジタルトランスフォーメーションとも表現できるこのような潮流に乗るためには自前主義ではまったく太刀打ちできず、学問領域間のクロスボーダーはもとより、産・学・官をも越境した、新たな共創・協働を目指すことが必要です。

 ここ30年間の日本産業の停滞に対して、私は「茹でガエルには蛇を」と言い続けてきましたが、今日では「新型コロナウイルス」が「蛇」になって社会を大きく変えようとしています。今般のパンデミックはあくまで解決可能な一時的な事象に過ぎず、早晩英知が解決するでしょう。しかし、より本質的には人類が生きていくための地球が持続することが前提です。その為には、深刻で根深い環境問題等への取り組みも一層重要です。言うなれば「Health and Sustainability for Human Well-being」を目指して、会員の皆様と共に未来社会を工学していきたく存じます。

2020年 7月 29日

(公社)日本工学アカデミー 会長

小林 喜光

(活動報告2019/2020 会長挨拶から転載)

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