skip to Main Content

公益社団法人 日本工学アカデミー

日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産学官の指導的技術者の団体です

お問い合わせ

Phone: 03-6811-0586
〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町二丁目7番3号 HKパークビルⅢ 2F

アクセスマップ

バイオマスアジアプロジェクト

本報告は、公益社団法人日本工学アカデミー「バイオマスアジア」プロジェクトの調査研究結果を取りまとめ公表するものである。

メンバー

リーダー: 西嶋 昭生

(所属はいずれも2016年3月現在)

・リーダー: 西嶋 昭生(日本工学アカデミー会員、早稲田大学客員教授)
・幹事: 佐村 秀夫(日本工学アカデミー会員、情報通信機構アドバイザー)、佐伯 とも子(日本工学アカデミー会員、東京工業大学名誉教授)、澤 一誠(三菱商事株式会社、地球環境・インフラ事業、環境エネルギー政策担当)
・委員: 伊藤 叡(新日鐵化学(株) 常務執行役員)、神本 正行(日本工学アカデミー会員、弘前大学 学長特別補佐)、玖野 峰也(日本工学アカデミー会員、常務理事)、羽野 忠(日本工学アカデミー会員、大分大学顧問名誉教授)、山田 守(日本工学アカデミー会員、山口大学農学部長)

これまでの活動(報告書)

要旨

1 プロジェクトを立ち上げた背景
バイオマスエネルギーの導入促進は、地球温暖化対策やエネルギー・セキュリティーの確保(石炭および石油依存度低減)の観点から有効な取組と期待されている。また、バイオマスエネルギーは、地域固有のエネルギー源として、農林漁業との連携を通じた地域経済の振興、雇用等の観点を踏まえて、地域の実情に即してその導入を進めていく必要がある。
近年、バイオマスエネルギーの導入は内外で政策的に進められたものの、原油価格の値下がり等もあり、輸送用燃料への導入は期待されたほどには進んでいない。一方、発電・熱利用は、再生可能エネルギーの導入促進を目指したFIT(固定価格制度、用語解説参照)等の導入もあり、内外で社会実装が進み始めている。
本バイオマスアジア・プロジェクトは、科学技術外交の一環として行われた省庁・産学官連携による国際政策対話{東アジア諸国との科学技術協力のための『e-アジア国際シンポジウム』(日本工学アカデミーも共催)}で提案された「アジアに豊富に賦存するバイオマスの利活用」の検討に応じて、日本工学アカデミーに設置されたものである。本プロジェクトではASEAN諸国の専門家と協働し、低炭素社会構築を目指したCOP21、パリ協定等の動向をふまえ、バイオマスエネルギーの社会実装に向けた検討を進めた。

2 プロジェクトチームの活動
プロジェクトチームは、以下の活動を行った。
(1)内外におけるバイオマスエネルギー導入状況の調査および課題の把握
① 発電・熱利用の現状
② 輸送用燃料の現状と課題
(2)内外へのバイオマスエネルギー導入に関わるプロジェクトチームからの提案
① 我が国における発電・熱利用、輸送用燃料
② ASEAN諸国における発電・熱利用、輸送用燃料
(3)JCM(Joint Crediting Mechanism、2国間クレジット制度、用語解説参照)に関わる実行可能性調査に参画し、インドネシアでのバイオマス発電事業の検討
(4)JST e-ASIAプログラム(用語解説参照)への応募(バイオマス利活用に関わるASEAN諸国との広域連携)への協力

3 プロジェクトチームの提案(要約)
なお、ASEAN諸国への英文提案は参考資料を参照されたい。
(1)低炭素社会構築に向けて、化石燃料に依存するエネルギーの諸問題を改善することが強く求められており、再生可能エネルギーを最大限度導入する必要がある。とりわけ、アジアには多くのバイオマスが賦存しており、バイオマスエネルギーの導入を推進することが最も有効である。
(2)バイオマスエネルギーの導入としては、バイオマス発電・熱利用、輸送用バイオ燃料としての利用が有効であり、次の2つに大別される。
① バイオマス発電・熱利用では、経済性、社会受容性、環境影響負荷評価などを十分に行うことが必要である。今後、FIT等に頼らないバイオマス発電・熱供給システムの確立が必要であり、安価な出発原料(発電用燃料)の生産・安定供給体制の確立を図ることがまず必要である。
さらに、既設の石炭火力発電所において、バイオマス(木質チップ、ペレット)の混焼割合を向上させることで低炭素社会に資することができる。混焼割合の向上には、混焼率を高めることが可能なトレファクション(半炭化)技術の導入を推進すべきである。
② 輸送用バイオ燃料での利用では、バイオジェット燃料(用語解説参照)、第2世代のバイオエタノール(セルロースエタノール、用語解説参照)、バイオディーゼル燃料(BDF)等の導入が、今後、必要であり、既存の化石燃料への混合割合を増加すべきである。
近年、原油価格が低下しているため、ASEAN諸国では輸送用バイオ燃料の導入が国の支援の下に進められているが、今後、さらなる輸送用バイオ燃料の導入に向けて、原料コスト低減のための技術革新、化学原料を併産するカスケード利用等を推進し、安価な輸送用バイオ燃料製造技術を確立し、輸送用バイオ燃料の導入を強力に進めることが必要である。
(3)バイオマスエネルギーの導入に当たっては、バイオマスが豊富に賦存する東アジア諸国を対象として、我が国が、二国間・広域地域(多国間)連携を構築し、バイオマス利活用を推進するための体制を早急に確立すべきである。

4 プロジェクトチームの今後の展望
プロジェクトチームでの一連の活動を基に、2017年4月からASEAN5か国(タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、ラオス)との共同研究(Feasibility Study on Social Implementation of Bioenergy in East Asia)が開始され、プロジェクトメンバーは、大学、産業界と連携し上記事業に参画している。
今後、20年後、30年後のあるべき姿を見据え、国内はもとよりASEAN各国(地域)の要望(工学人材育成も)をふまえ、経済性、社会受容性、環境影響負荷等を加味した低炭素社会構築に向けたより一層の努力が求められている。プロジェクトチームはASEAN諸国、タイ工学アカデミー等とも連携を強化しバイオマス利活用の社会実装に向けて調査研究等の活動を今度とも進めていくことを予定している。

Back To Top