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公益社団法人 日本工学アカデミー

日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産学官の指導的技術者の団体です

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自然エネルギーのガバナンスプロジェクト

本報告は、公益社団法人日本工学アカデミー「自然エネルギーのガバナンス」プロジェクトの調査研究結果を取りまとめ公表するものである。

メンバー

リーダー: 大久保 泰邦

(所属はいずれも2017年4月18日現在)

・リーダー: 大久保 泰邦(日本工学アカデミー会員、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構)
・幹事: 山本 達也(清泉女子大学文学部地球市民学科准教授)
・委員: 大里 和己(地熱技術開発株式会社取締役)、北川 尚美(東北大学大学院工学研究科化学工学専攻准教授)、久保田 宏(東京工業大学名誉教授)、林 農(日本工学アカデミー会員、鳥取大学名誉教授)、松島 潤(東京大学大学院工学系研究科准教授)

本報告の作成にあたり、以下の方々に御協力いただいた

安藤 満(一般財団法人日本農村医学研究所客員研究員)、大政 謙次(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)、大和田野 芳郎(国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域再生可能エネルギー研究センター 名誉リサーチャー)、笹田 政克(特定非営利活動法人地中熱利用促進協会理事長)、佃 栄吉(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター特別顧問)、中尾 信典 (国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター地質調査総合 センター研究戦略部研究戦略部長)、山地 憲治(公益財団法人地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)

これまでの活動(報告書)

要旨

1 作成の背景
石油・天然ガス・石炭などの化石燃料は有限で、いつかは生産ピークを迎える。課題解決のために都市への集中型大規模エネルギーだけでなく、地方で作られる水力、地熱、太陽光、風力、バイオマスなどの分散型再生可能エネルギー開発が望まれる。
2014年日本学術会議がまとめた報告「再生可能エネルギーの利用拡大」では、資源論で言う資源量に相当する導入ポテンシャルを算出し、再生可能エネルギーだけで現在の全発電電力量を賄えるとして固定価格買い取り制度(FIT、feed-in tariff)を活用した地方の活性化を目指したエネルギー開発を提唱した。現在地方においてはFITなどの制度を利用した再生可能エネルギーの開発が進んでいる。しかしそのさらなる発展のためには、地方から都市へ輸送する大規模エネルギーと異なり、地方が受益者となる新たな地方独自のエネルギーガバナンスが必要である。
日本工学アカデミーは『自然エネルギーのガバナンス』プロジェクトを立ち上げ、日本学術会議の『分散型再生可能エネルギーのガバナンス』小委員会と連携して、多様な再生可能エネルギー開発の実態をしらべ、再生可能エネルギー開発の在り方を議論し、それぞれの地域が受益者となり、活性化するためのガバナンスを検討した。

2 現状及び問題点
全電力需要だけでなくエネルギー消費量全体にも匹敵する量の再生可能エネルギーが存在するとの指摘がある。確かに存在するであろうが、実際に開発されている量は存在量と乖離がある。エネルギーが存在するとしても、採算が合う地域が限られている、地熱のように開発可能な地域に制限があるなどによって、実際に導入可能な地域は限られる。現実的な導入可能量を算出し、開発のシナリオを再検討する必要がある。
石油、天然ガス、石炭といった化石燃料に大きく頼っている日本において、再生可能エネルギーの活用はエネルギーの多様化、安全保障、さらには分散型社会、地方活性化に繋がるとの指摘がある。エネルギー生産は確かに地方で行われているが、消費者は地方となっていないので、地方活性化に結びついているとは言い難い。その地域のアイデンティティを明確にすることによって活性化に必要なエネルギーは何かを考え、地産地消のエネルギー作り、活性化へと結びつけるシナリオが必要である。
再生可能エネルギーの有効利用には、エネルギー変換技術やエネルギー収支比などによる評価といった技術、信頼性の高いエネルギー供給網などのインフラ、電力買取制度などの制度、環境への影響評価について、地域に密着したガバナンスが重要となるとの指摘がある。しかし現在のFITといった補助金制度では開発が行き詰ると予想される。現実には補助金制度によって中央から地方へ資本が流れ、中央の資本家が儲けるというビジネスモデルで、地方が儲けるビジネスモデルとはなっていない。エネルギー生産を地方の産業として自立するためには、エネルギー生産過程の中で付加価値を付ける、価格競争に勝てるビジネスモデルを作るなどが必要となっている。

3 まとめ
1)再生可能エネルギーの潜在的なポテンシャルは非常に大きいが、実際には自然現象に左右され、開発可能量はそれほど大きくはない。このことを認識して開発を行う必要がある。
2)FITは一種の補助金制度で、コスト上昇分を電気利用者が負担する制度となっている。FITに頼らないことが持続的な再生可能エネルギー開発に結び付く。
3)2017年2月24日に開催した公開シンポジウムの参加者から、再生可能エネルギーの開発は、地方が中心で、多様なステークホルダーが存在することが分かった。
4)東近江市や山梨県は、政府が主導するFITに頼らず、地元の産業活性化を目的とした再生可能エネルギーを開発し、持続的な経営を行っている。
5)再生可能エネルギー開発には、その地域、その時間の自然現象に左右されて、一般論は無く、そのガバナンスは地域に密着したものとなる。
6)再生可能エネルギーは電気としてだけでなく、熱として利用が可能である。熱利用の方が効率が良い場合が多く、その視点を加えるべきである。
7)実践で得られた経験を交換する場となるフォーラムが、今後の再生可能エネルギー利用拡大に貢献する。

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