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第2回日英シンポジウム
「グリーンマニュファクチャリングとエコ・イノベーション」

第2回日英シンポジウムTG主査 山﨑 弘郎/ HIRO YAMASAKI

第2回日英シンポジウム
開会宣言

去る6月2日と3日にロンドンの英国王立工学アカデミー(RAEng)のホールで開催された第2回日英シンポジウムに参加したので報告する。

参加者は合計72名であった。プログラムは6セッションから構成され、英国側は国際委員会の W. Wakeham教授が一人で会議の司会をされたが、日本側はプログラム作成に従事した岡田、三島、垣澤、山﨑が交替で共同司会者を務めた。

第1セッション「ウエルカム」 Wakeham教授と岡田国際委員長の挨拶に続き、日本大使館経済公使 岡浩氏が歓迎の挨拶をされた。続いて日英の基調講演があった。Brian Collins博士(ビジネス・イノベーション・技能省)は英国が低炭素社会へ向かう政策を紹介し、西岡秀三博士(国立環境研究所前理事)は排出低減目標への可能性とロードマップを紹介した。25%削減目標達成には政治の強い意志と支援が必要と強調されたが、目標を掲げた鳩山総理がシンポジウム前日に辞任したことが残念であった。

第2セッション「ビジネスモデルとプロセスイノベーション」 英国側3人の発表があった。Steve Evans教授(クランフィールド大学)が持続可能な生産プロセスを英国に定着させる具体的手法の提案と産業界の対応を紹介し、David Clarke博士(エネルギー技術研究所)は英国のエネルギー・システム改革のための計画と予算サイズと目標を示した。Mike Gregory 教授(ケンブリッジ大学)は持続性への産業の挑戦において研究と国際的な協調の重要性を強調し、複数の分野を見渡せるマルチ・ディシプリナリな人材が必要と述べた。

第3セッション「製品設計」 原田幸明博士(物質・材料研究機構)が金属元素につき地下の資源量と活用され地上に存在する量を対比し、アーバンマイニングの必要性を説明した。課題として収量、品質、コスト、製品設計などをあげた。Richard Williams教授(リーズ大学)は水を使用しない洗浄を普及させる活動について紹介した。三島望博士(産業技術総合研究所)は環境に配慮した効率で評価する設計指針を提案し、PCなどを例に手法を紹介した。製品のライフサイクルでの効用を最大に、環境に対する影響を最小にする手法である。Paul Stein 氏(ロールスロイス社)は製品が実際に環境への影響を考慮に入れた設計である例を示すとともに、将来技術の低燃費のエンジンを使用した旅客機や海の潮汐を利用した発電に言及した。
最後に山﨑が第1日のセッションの総括を述べ、問題に対する接近過程に、英国はトップダウン、日本ではボトムアップで理解や技術を積み上げていく傾向がみられると指摘した。

第4セッション「電力供給とエネルギー効率」 若狭裕氏(横河電機)が日本のプロセス産業のエネルギー効率を諸外国と比較し、すべての業種において高いことを示した。原因は業種を超えた省エネルギーのコンソーシアムが組織され、さらにきめの細かい計測制御システムを使用し効果をあげたこと、しかも、それが品質向上にも貢献したことを示した。Joe McGeehan教授 (東芝欧州研究所)がスマートグリッドの情報技術について述べ、Interoperabilityの大切さを強調した。横山明彦教授(東京大学)は計画中のスマートグリッドについて全体像を示した。計画は複数の局面と発展段階を含む。英国側の全体像は示されなかった。Marcus Newborough教授(ITM パワー社)は水素エネルギー・システムの構築について発表し、電解水素製造のための電力も再生可能であることを強調した。尾嶋正治教授(東京大学)は燃料電池(PEFC)用の白金を使用しない新しい触媒を発表した。Jon Hefferman博士(シャープ英国研究所)は太陽光発電とLEDによる照明技術の開発を紹介した。

第5セッション「新デザインコンセプト」 日本の3人の講師から斬新な例が紹介された。江刺正喜教授(東北大学)からナノ技術を使用した実用可能なMEMSが紹介された。超小型のセンサやアクチュエータは省資源、省エネルギーである。静電気により浮上して高速回転するジャイロセンサなどユニークな研究例が示された。日本人は昔から自然の仕組みをうまく取り入れ、省エネルギー、省資源の生活をしてきた。自然に学び、活用する技術を“Nature Technology”と名付けた。石田エミール教授(東北大学)より紹介され、新しい概念として提案された。垣澤英樹博士(物質・材料研究機構)は構造での例として「あわび」のシェルをあげ、保守不要、製造が省エネルギーなど優れた構造体として合目的的で優れた特性を示す研究成果を紹介した。

第6セッション「パネル討論と総括」 司会はWakeham教授、パネリストは西岡、石田、三島、垣澤、McGeehan、Williamsの6人で、主に前日の総括で述べた日英両国間のトップダウン、ボトムアップの差について議論した。
最後に2日目のセッションを山﨑が総括し、Wakeham教授が結びの言葉を述べて終了した。

全体を通した感想 日本企業が英国に研究拠点を設け、英国人研究者を活用していることが印象に残った。また英国でも大学卒技術者が、ものづくりではなく金融などに就職する傾向があるとのことだが、これは今後取り上げるべき問題ではないだろうか。

 

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