年頭のご挨拶 2011年賀詞交歓会および理事会において

 新年おめでとうございます。今年は日本工学アカデミーの飛躍の年にしたいと思います。財政的には厳しい状況にありますが、私達のアクティビティを高め、日本や世界に貢献することが、結果としてアカデミーの財政改善をもたらすと信じています。いつも申し上げているように、日本は課題先進国です。その課題を解決し、解決手法を世界のスタンダードとして発信することこそ日本が生きる途です。そのために工学が果たすべき役割は大きく、またわがアカデミーが貢献する場でもあります。
  昨年来、私はアカデミーの活動基本方針として、地域活性化、国際(特にアジア)交流、人づくりの3つを掲げてきました。私たちの活動を提言だけにとどめず、具体的な成果に結びつく行動に移すことに力を注ぎたいと思います。
  私は、エコロジカルで高齢者が社会に参加し、人生100年時代の人づくりが行われ、十分な雇用がある社会を「プラチナ社会」と名づけ、これを全国に展開するため、企業、自治体、市民からなる組織「プラチナ構想ネットワーク」を立ち上げました。昨年末、第1回シンポジウムを開き、参加自治体の首長に各地での取り組みを紹介してもらいました。まだ、それぞれの取り組みはバラバラな印象を受けましたが、ネットワークが機能すれば、大きなうねりとなり停滞する日本を活力のある国へと変貌させることができると信じています。
  私たちが注目したいのは、このネットワークの活動を支えるのはITをはじめとする科学技術であるということです。
  アカデミーもこれまでの地区活動に加えて、今後は「プラチナ構想ネットワーク」とも連携を保ちながら、大学や企業と一緒になって地域の活性化を推進していきます。そうした活動をベースとして、幾つかの地域に50人規模の会員を擁するアカデミーの「支部」を設けたいと思っています。島嶼部の医療問題など具体的なテーマも見え始めていますので、今年中に少なくとも一つの支部を作るということを目標として進めます。
  全米工学アカデミーのVest会長とは旧知の仲ですが、先日会った際に、実績のある日米先端工学シンポジウムに加えて、新しい日米アカデミー間の連携の可能性について話し合いました。日米の緊密な関係を基調におきながら、今後ますます重要性を帯びてくるアジア諸国に対する戦略を考えに入れた国際交流を実践していきたいと考えています。日本の優れた環境技術を急成長しつつあるアジア諸国に適用することは、グローバルな低炭素化対策としても極めて重要であり、また日本の産業活性化にとっても大きな意味を持つものといえます。
  人づくりの重要性はいうまでもありません。大学教育と企業ニーズのミスマッチがよく議論されますが、産学の有識者を擁するわがアカデミーこそ、その問題に真剣に取り組み、また単なる知識の教育だけではなく、真にイノベーションを生むことのできるグローバルな人材をいかに育てるかを考えていかねばなりません。
  会員の皆様のご理解と積極的な参画を期待しています。

2011年 1月13日

(社)日本工学アカデミー 会長

小宮山 宏